- 作者: 山下祐介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/01/05
- メディア: 新書
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『限界集落の真実』山下祐介著を読む。
きっかけは、山口連続殺人放火事件。
その舞台が限界集落とされるところだった。
果たして限界集落とされた過疎の集落は、滅んだのか。
作者はフィールドワークで実態を探る。
衰退こそしているが、滅んではいなかった。意外だった。
これは、どうやら「報道」メディアによって
限界集落という刺激的かつ使い勝手の良い言葉が
一人歩きしたせいだと。
引用一か所。
「家とむらをめぐる3種類の生き方
(1)家に残って家・むらを守り続ける人がいる
(2)むらからは出て行くが近くにいて支える人がいる
(3)むらから遠く離れることで迷惑をかけずに生きる人もいた
三種の生き方で家の危機・むらの危機を乗り越えようとしたわけだ」
(1)は、いわゆる跡取りで長男・長女、
(2)(3)は、次男・三男、次女・三女以下。
日本の高度経済成長を支えた都市部の労働力となった。
パラサイト・シングルは、当初(3)の子ども世代を表していたが、
いまは(1)(2)にも拡大しようとしている。
血縁、地縁が濃厚ゆえ、
若い世代あるいはリタイアした世代―前述の(2)(3)の層―が
ユーターンしても、支障を来さないようにすれば、過疎は防げるかもと。
インフラ整備とかハード面よりもソフト面の充実なのかなあ。
高齢化よりも少子化が問題だと。納得。
限界集落というと、地方と思われるが、
実際、高齢者ばかりが生息するようになった都市の公団住宅などは、
限界集落の条件を満たしており、血縁、地縁も希薄。
作者は、むしろ、こちらの方が問題は大きいのではないかと述べている。
―前述の(3)の層―
山口連続殺人放火事件って
最初ニュースで知ったときは、
まんま横溝正史じゃん。と思ったが、
事実関係がわかるにつれ、
スティ−ブン・キングの『シャイニング』かと。
映画だとジャック・ニコルソンの怪演が、かぶる。
疎外感転じて凶行に及ぶ。
アニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』では、
おおかみこどもを育てるため、
母親が地方に転居する。自給自足をしようと畑を借りる。
当初は完全アウェー、よそ者扱いだったが、
懸命に土地に生きようとする母親の姿を見て、
次第に親切にされるようになる。
ただし、ここではプライバシー、
ヒエラルキーの最下層に位置する新参者のプライバシーはない。
常時衆人環視のもとにさらされている。
先住者が、敷地内に入って来るのは、当然。
だが、その逆は許されない。
下っ端扱いは、年功序列で長たちが亡くなるまで続く。
順送り、代替わりでようやく地位が上がる。
映画『イージーライダー』の強烈なラストシーンも、
よそ者は排除する、わしの眼の黒いうちは好き勝手はさせん。
というジモティの保守的な土着思想からと考えられる。