「AV女優」の社会学

若くないとできない仕事って何だろう。
スポーツ選手、SEとかもそうか。アイドル。で、AV女優。
熟女AVものもあるが。

『「AV女優」の社会学』鈴木涼美著を読む。


「私は1999年に女子高生になったが、すでに東電OLのような引き裂かれるほどの必死さとは程遠く、性の商品化の現場を通ってきた」

という著者は、いっとき流行ったAV女優の自分語りじゃなくて
AV女優と「AV産業の構造」を検証していく。

男性がこの手のものを書いたり、AV女優にインタビューすると
どうしてもフィルターなり、違うか、一種のバイアスみたいなものが
かかってしまいがちだが、同性の同世代に近い作者は、
プロダクションなどにも出入りして
友だちみたいな感じで彼女たちに取材する。

確かに「フィールドワーク」だ。

「プロダクションのプロデューサーとの面接」により
セリングポイント、アピールポイントが決められていく。
たとえば、高偏差値、高身長、巨乳、帰国子女、腐女子とか。
エロ動画デビューするまで、してからの過程は、
芸能人と同じ。

 

面白かったのは「単体AV女優」よりも「企画AV女優」の方が
実入りがいいということ。
ライターが単著を出すよりも、スタッフライターでコンスタントに
本を出した方が稼ぎが良いというのと同じだろう。


AV女優は大量複製、コピーされたヴァーチャルな身体であって
ストリップや風俗などで生身をさらすのは、
プロダクションとして避けたいのは、商品価値上、そうかもね。

論考なのだが、エセーのような文体。
どことなく、はすっぱというか自然体な感じが魅力的。
岡崎京子の漫画のト書きをふと想像した。


AV女優で成功してそこそこの金をつかんだ。
では、その先は。女優になるのか。キャラを活かしてタレントになるのか。
絵心がある人は漫画家になるのか。


親には言えない職業。
「そんなものになって、将来、どうする」。
終身雇用の正社員が当たり前の時代なら、少しは効いたかもしれないが。

何が上がりで何が正しいんなんだ。そんなの、わからない。

 

8月の午後、仕事で、東電OLがかつて出没していた界隈を偶然通り過ぎた。
久しぶりだったので、近辺は新しい店ができていたが、
その基本的な風景は変わっていなかった。



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