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ぼくらは都市を愛していた

ぼくらは都市を愛していた

『ぼくらは都市を愛していた』神林長平著を読む。


3.11 東日本大地震によってさまざまなものを喪失した。
いろいろなものの欠陥や不備が露呈した。
バベルの塔ではないが、自然の猛威には
残念だけど勝てないことも判明した。


では、高度情報化社会といわれるそのインフラが
突然、壊滅してビッグデータが消滅してしまったら。
作者は、「情報震」と名づけ、
ポスト「情報震」の都市を舞台に、ある殺人事件を探る。
新たな通信メディアは体間通信、
究極のユビキタスコンピューティング。
テレパシーっていってもいいかもしれない。
養老孟司曰く「都市=脳化社会」。
体間通信とて管理・監視されている。
そのパノプティコンの隙間をかいくぐれるのか否か。
AR(拡張現実)と現実の際が曖昧となり、
セルフ・アイデンティティも曖昧となる。
リアルな俺とバーチャルな俺。
成りすましているのは、どっちの俺。
幾らでも自己増殖化していく俺。
星野智幸の『俺俺』
にも重なるテーマ。


器官なき身体から身体なき器官へ。
攻殻機動隊』と野島伸司脚本のTVドラマ『高校教師』をミクスチャしたような。
都市の魅力はカオスにあるのだから、愛せるのだろう。


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