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新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)

新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)

ナショナリズムは悪なのか』萱野稔人著の引用とメモ。

この書名を見たとき、なぜか『国を思うて何が悪い』阿川弘之著を思い出した。
読んでないが、まあ立ち位置は真逆なのに、
なぜか似ているという。新左翼新右翼みたいなもんか。
以下気になるところを引用。

「もし貧困や格差の問題そのものに日本政府が何らかの対処をするので
あれば、日本の格差問題のために予算を使うよりも、世界の最貧国のために
予算を全面投入するほうが、はるかに効果があるはずだ。
にもかかわらずそうした主張がリベラルな知識人を含めて出てこないのは、
ナショナリズムの力がそこに働いているからである」

「世界の最貧国のために(日本国家の)予算を全面投入」せよとは、
いくら友愛の人とていわないだろう。

「私がナショナリズムを肯定するのは、基本的に「国家は国民のために
存在すべきであり、国民の生活を保障すべきである」と考えるところまでだ。
もしナショナリズムが「日本人」というアイデンティティのシェーマ(図式)を
活性化させて、「非日本人」を差別したり「日本的でないもの」を排除
しようとするなら、私はそのナショナリズムを明確に否定する」

広義のナショナリズムと狭義のナショナリズムの違い。
言葉のもつ曖昧さが誤解を招く。

「産業社会では人びとが特定の土地や仕事から切り離されて流動化する。
それによって、コミュニケーションも職能も、特定の土地や人間関係や
コンテクストに縛られていた農耕社会とは比べものにならないほど
抽象化する。産業社会ではその流動性ゆえに逆に共通の言語や標準化された
基礎的技能が人びとに必要とされるようになるのだ」

かつての日本の高度経済成長を為しえたのは、この「流動化」によってだ。
いい意味・悪い意味でも個性を均され、
「共通の言語や標準化された基礎的技能」を習得させられた同じ顔の企業戦士たち。
成長が停滞もしくは後退したいまは、固定化。
地元志向。つーか出口なし、袋小路状態。
本当に抜けられません。
「小商い」は活性化の起爆剤となるのだろうか。

「グローバル化している世界には、その範囲を覆うほどの国家は
存在しない」
「これが、個々のネーションがグローバル化されない理由である」
「ネグリ=ハートのいうグローバルなマルチチュードの民主主義が
実現しないのも同じ理由からだ」

うまくいくとみられたユーロ圏とてギクシャクしてるし。
TPPもどうなのだろう。

「そもそも国民国家というのは、国民によって国家が担われるという
国家形態のことである」
「国家の意思決定は最終的には物理的暴力によって実効的になる以上、
国家の意思決定過程と軍隊の組織化への国民参加は表裏の関係にある」

以前書いた『マルチチュード(上)(下)』ネグリ=ハートのエントリー。

サーバが不安定なので、運のいい人なら読めるかも。


マルチチュードって

白いツナギ


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