- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/10/14
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- 作者: 堀江邦夫
- 出版社/メーカー: 講談社
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『王国』中村文則著を読む。
『掏摸(スリ)』のスピンオフ的作品だそうで、
悪が支配している裏社会。それに翻弄される女性。
って世界観がどうしても村上春樹のそれと重なって見える。
山下達郎とジャンクフジヤマの違いぐらいか。
『掏摸(スリ)』の方が物語自体に奥行きがあったが、
この作品は、なんか薄味つーか淡白。
エロ風味なのか、バイオレンス風味なのか、サスペンス風味なのか。
何かが足りない気がする。
と思ってしまうのは『原発労働記』堀江邦夫著を併読しているからかも。
「美浜、福島第一、敦賀」と1年余り原発を渡り歩いたノンフィクション。
「じかに原発と接したい」というのがモチベーションだったそうだが、
約30年を経て作者は
「死の淵を過去二度にわたって彷徨し、太い人工血管を
全身に埋め込まれ、およそ考えつくかぎりの後遺症に次々と襲われ、
そしていまでは「リハビリ難民」となってしまった」
ことを「跋にかえて」で知る。その代償は余りにも大きいのではあるまいか。
こちらも原発というもう一つの王国で、
抑制のきいた文体で原発労働者を克明に記述している。
巨大な原発施設内の清掃・補修など作業の描写は
すさまじく、アラームメーターが鳴ったり、作業中不快感に襲われたり、
実体験ならではの迫力。
30年経っても現場の作業はさほど改善されたりはしなかったのだろう。
人力で動く原子力。
オリジナルの『原発ジプシー』増補版もあるから、
そっちと読み比べてみたい。