有用について

人物で語る化学入門 (岩波新書)

人物で語る化学入門 (岩波新書)



『人物で語る化学入門』竹内敬人著の読書メモ。

「人類に共通の二十一世紀の目標は、持続可能な社会の構築であろう。
だが二十一世紀を待つまでもなく、化学はすでにその方向を模索し、
実践してきた」

関係ないが、「人類」と「持続可能」がくっつくと、人間様の傲慢さを
感じてしまうんだが。それから、「持続可能」なんだろうか。
日本そしてオレ。

「十九世紀後半に化学工業が勃興し、さまざまな有用な物質を安価に
生産するようになった。それは人類にとって福音であると同時に、時として
問題を引き起こした。フラスコの中で反応が行われる限り、何が生じても
大きな問題はなかった。」

「有用」という言葉も曲者で、何ごともメリット・デメリットがある。
それを天秤にかけてメリット>デメリットであれば、多少の犠牲は止むを得ず
ってスタイルで、企業は儲かって、
消費者、ユーザーであるぼくたちはいろんな恩恵や便利さを享受してきた。

やがて

「農薬の大量散布によって引き起こされる自然破壊・環境破壊」
「フロンによるオゾン層破壊」

などなど「大きな問題」が起きた。

お気楽に言ってしまうと、でもこの問題を克服、クリアしようとして
科学者たちは日夜取り組んでいる。ウィルスとワクチンの終わりなき
戦いのように。

個人的に最もひかれたところ。長く引用。

放射性同位体14Cは大気中で宇宙船の働きによって微量ながら絶えず
つくられているので、空気中の二酸化炭素はごくわずかながら一定量の
14Cを含んでいる。それを含む二酸化炭素が光合成によって植物体内に
取り込まれるから、植物が生きている限り、植物体内の14C濃度また
一定に保たれる。しかし植物が死ぬと、空気中の二酸化炭素との交換は
止まり、14Cは放射性壊変によってしだいに減少する。14Cが初めの量の
半分になる時間、すなわち「半減期」は約五七三〇年である」

「考古学的試料に14Cがどれだけ残っているかを測定すれば、その試料の
およその年代が測定できる。この「放射性炭素年代測定法」は、
一九四七年にアメリカのリビーによって報告された。
彼はその功績によって一九六〇年にノーベル化学賞を受賞した。
−略−例えば縄文時代がいつから始まったか、といった問題に
議論の材料を提供した」

放射性同位体14Cを取り上げた章には「自然がつけたタグ」と
小見出しがついているが、素敵じゃないか。


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