- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/02
- メディア: 文庫
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『言壺』神林長平著を読む。
「文章作成支援機能ワーカム」なるもので小説が
楽に書けるようになってしまった作家。
至れりつくせりで手放せない関係。
ところがワーカムが言うことをきかなくなってしまって。
ワーカムを操っていたはずなのにいつの間にかワーカムに逆支配されていた。
そしてワーカムは次第に変調を来たしていく。
『2001年宇宙の旅』のコンピュータHALをイメージしてしまうが。
1994年単行本発刊か。
なんだか電子書籍について言及している箇所が多々ある。
「電送版」と表現されているが。紙の本になるのは困難らしい。
主人公の作家仲間は、専業作家を辞めて会社勤務の傍らに書く、
兼業作家で新作を発表している。
偶然かも、いや、本ではなくアプリと称され、ゲームなどと一括り。
印税のパーセンテージは高いが、電子書籍マーケット自体がお寒い状態ゆえ…。
いけない、いけない、いつのまにやらレビューからグチになってしまっている。
主人公の兄の「サイメディック創作マシン“クリエータ”」に
「ウィルスが侵入」し、「干渉し、(言語構造を狂わせて)精神構造を
おかしくする」と。
「サイメディック創作マシン」って、
「言語」−文字情報を取り込むと、
「脳のほうで、連想的に絵や音として再構成する。うまく同調すると、
映画の中にそっくり入り込んだような仮想空間に入れる」
もの。
いやあサイバーぽいねえ。
でも、バーチャルリア充じゃなくてリア充。ということだよね、用法が違うか。
ぼく自身、シャープペンシルと原稿用紙から、ワープロ、パソコンへと
書く道具とスタイルは変わってきた。
薔薇や憂鬱、齟齬など手書きではよう書けない文字も変換してくれるのは、
助かることは助かる。でも、それまでで。
ネットとて万能じゃない。それはわかる。でも助かることは助かる。
調べものをしていてネットじゃわからなくて、
ダメもとで閉館間際の図書館に駆け込んで救われたこともある。