なごみの随筆

夕暮の緑の光――野呂邦暢随筆選 《大人の本棚》

夕暮の緑の光――野呂邦暢随筆選 《大人の本棚》

『夕暮の緑の光 野呂邦暢随筆選』を読む。編者は岡崎武志
そのせいか本、古本に関する随筆が印象的。
ぼくも仕送り前にピンチになると、
日払いの引越しのアルバイトをするか、
手持ちの本を近所の古書店に売った。
コンパ代がちと足りないときにも売った。
でも古書店で買った金額と比べると、圧倒的に買った金額の方が高かった。
当り前だけど、文章が滑らか。いい日本酒みたいにするする読める。
途中、テレビでアジア杯の日韓戦が始まったので、続きを読みながら見る。
で、サッカーから目が離せなくなり、読書は中座。
PKで勝ってから残りを一気に読む。


作者は小林信彦と生前親交があったようで、小林のエッセーに出て来る。
確か諫早から所用で上京した際は、『ぴあ』にマルをつけ、
映画をハシゴしていたとかいう、そんな件(くだり)だった。
自衛隊時代を記した『草のつるぎ』で芥川賞をもらったのは、
知っていたが、大学受験時に父親の事業が倒産したことは知らなかった。
だからか。不遇の東京時代、ガソリンスタンドで働く。
いまでいう非正規雇用ってヤツ。
自衛隊に入隊して、はじめて人間扱いされたという一文は、
そうだろうなと思う。
自分の居場所を見つけたわけだし。
アメリカの軍隊だったら、除隊後に奨学金で大学進学という道もあるけど。
やがて作者は諫早の図書館で濫読、一人で作家修行を始める。
高校の一学年上の蒲団屋の息子が、同じように
毎日風呂敷包みに参考書とノートを包んで図書館に通って、猛勉強していた。
その甲斐あって翌年、早稲田の商学部に受かった。
税理士になると意気込んでいたが、その後、どうなったのだろう。


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