- 作者: ハーマン・メルヴィル,千石英世
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/05/10
- メディア: 文庫
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金はないけど、時間はあるので、黄金週間に、
名訳の誉れ高い千石英世訳『白鯨』メルヴィル著上巻を読んでいる。
300ページになってやっと、あのエイハブ船長が出てくる。
まさしく異形のもの。
それまでは、鯨の文化史や
その当時(日本に黒船が来航したあたり)の港町や
国籍・人種の異なる船乗りなどが重層的に描かれている。
解説を読むと、作者自身「捕鯨船の平水夫」で
南太平洋を漂泊していたとか。
産業革命によって燃料の油が不足となり、マッコウクジラの鯨油に
目をつけ、捕鯨業が盛んとなる。
作者自身、異文化を体験する中で
近視眼的、もしくはステロタイプ的な
西欧文明の豊かさ、物質文明の豊かさには、
疑問を感じていたのではないだろうか。
アウトサイダーつーか
ヒッピー的な精神のさきがけといってしまってもいいような。
でもグリーンピースやシーシェパードとは、違うと思うけど。
クジラは、聖書(正しくは旧約聖書か)にも出てくるリヴァイアサンなのか、
神の化身なのか。
上巻の終わり頃にようやく白鯨の登場となる。
白鯨は、人間の冒涜に対する戒め、復讐なのか。
やっと面白くなってきた。
最初の方に「ピークオッド号の航跡」が紹介されている。
ナンタケットからカナリー諸島を経て白鯨を追尾する。
日本はジャパン沿岸漁場、ジャパン沖漁場。
ハワイはサンドウィッチ群島、マルケサス諸島はマーケサス諸島。
地図を眺めれば、想像力をよりかき立てられる。