- 作者: 永井龍男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/03
- メディア: 文庫
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ほぼ引きこもり状態が続いている。
永井龍男の『朝霧 青電車 その他』を読了。
「一杯のハイ・ボール、一本のビールが、帰宅の足を
軽くする―、そんな時代が、この間まであった」
『花火』より
ああいい一文だと思う。
ひと仕事終えて会社の同僚と安酒を呑む。
で、いまにもいえるよなと思う。
でも、いまなら「帰宅の足を重くする」って感じかな。
○『朝霧』
主人公は元教師の老人でボケている。
キャラクターが『先生の鞄』の先生と重なる。
この老夫婦の短いやりとりが、小津の映画のよう。
笠智衆と東山千恵子のような。
○『青電車』
これは凄みのある作品。
せっかくいい夫に出会えたのに、
浮気の虫が出て逢瀬を重ねる女。
罪の意識からか、
省線に飛び込む。
轢かれながらも意識はかすかにある。
生と性と死。
読後感がなんとももの哀しい。