『発掘』読了

伊藤整の長篇3部作『氾濫』『変容』そして『発掘』をようやく読了する。
『発掘』も絶版ゆえ図書館の保存庫にあった
新潮社「伊藤整全集第十巻」収録のものを読む。二段組、ちっさな字。
『変容』よりさらに性の中に死のにおいが濃厚で、
中年のぼくにも読んでいてつらい描写が多々あった。
つーか、この境地にはまだ早いというのか。
『新潮』連載後、単行本化の際、手を入れるはずだったが、
病がそれを許さず、そのまま発刊となったそうだ。
確かに終り方が、あっ気なく、作者自身も徹底的に直したかったようだ。
主人公が途中から嫌な咳をしはじめ、肺ガンを暗示させる。
作者は、胃ガンで逝去する。


ぼくは主人公の老年の紳士より
彼の隠し子である貧しい大学生の方にシンパシーを感じていた。
主人公の妻のエキセントリックさは、夫の度重なる浮気が要因によるものだが、
その尋問、詰問と夜の営みを迫るサマは
小島信夫の『アメリカンスクール』を彷彿とさせる。


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構成・ライティングを担当した
MasterCardファイナンシャル・マネージメント対談が更新されていた。
「第3回 物事は最初の思いの強さで決まる 」
丸山和也(弁護士)×原江里菜(プロゴルファー)


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