- 作者: 石井淳蔵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/04/21
- メディア: 新書
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『ビジネス・インサイト―創造の知とは何か 』石井淳蔵著の読書メモ。
「インサイト」とは、「将来を見通していく力」。
「優れた経営者は、事業のインサイトを得てビジネスの発展を図る。
優れたマーケターは、消費者インサイトを得る仕掛けを作り、
それを手がかりにみずからのマーケティングのインサイトを得ようと考える」
宅急便、セブンイレブン、ダイエー、キットカット、
カルビーポテトチップスなどのビジネス・インサイトの事例も
適宜取り上げられていて、理解の一助に役立つ。
面白かったのが、ここ。
「経営者は跳ぶのが仕事。そこは経営者の独特の感覚がものを言う」
よく言われるように、伝統やブランドは、ただのれんを守るだけでは、
続かない。新しい試みや停滞気味の企業には、ある意味破壊的な行為など
荒療治も必要だろう。
現パナソニックを創業した松下幸之助、ホンダを創業した本田宗一郎、
ダイエーを創業した中内功、トーヨーサッシを創業した潮田健次郎。
ビジネス・インサイトの先達である彼らに共通するのは、
「実業に就いてから、学校に通った」ことだそうだ。
学問というといわゆる机上の空論というのか、現場では役に立たないと
思われるきらいもあるのだが、彼らは違った。
「学者の所説」を「慧眼の経営者は重要な経営上のインサイトに結びつける」。
「学者の所説を−略−自分の構想に取り込む」
「新たな意味づけを与え新しい生命を吹き込む」。
なるほど。跳ぶのが怖いとは正反対。
「ビジネス・インサイトの偶優性」とは、セレンディピティとほぼ同意だろう。
インサイトを発見できたのは、偶然かもしれないが、
常にビジネスの種子を探して、水や肥料をどんどんやる。
そういう意味では、決してまぐれ当たりではない。
ここまでが腑に落ちた部分。
暗黙知を引き上げて、ビジネス・インサイトを獲得する。
その方法のさわりが紹介されているが、新書ゆえ言葉足らずって感じ。
言葉足らずというよりも未消化な部分があってわかりにくいかも。
たぶん、新著で考えが練り上げられていくのだろう。
ま、事例関連を読むだけでもビジネス・インサイトの基本は、
わかるかもしれないが。