終の住処

返信メールでかつて同僚だった友人が、会社を立ち上げたことを知る。
きちんと法人にしてあるので、まとまった仕事をゲットするようだ。
がんばれ。彼のお嬢さんが丸っきりぼくの大学学科の後輩とは。


『新潮6月号』に掲載されている「終の住処」磯崎憲一郎を精読する。
震えたね。婦女子向けじゃない小説が読めるとは。
当該者の方々は気を悪くしないで、『ハリー・ポッター』でも読んでて。
語弊があるか。なら、現代日本文学のメインストリームに
位置づけてもよい作品。


30歳過ぎて結婚した男女。すでに大人なわけで甘い新婚生活なんて無縁。
いきなりドライなわけ。男は、いわゆる薬品会社のプロパー。
職場も劣悪だが、家庭も居ずらい。イラクサの家で。
やがて子どもができ、マイホームを建てる。
このあたり、家を建てる描写は、小島信夫を彷彿とさせる。
男は、会社に長居し、外に次々と女をつくる。
この女性遍歴をふくらませるとまた違った趣の小説になる。
サラリーマン小説だと黒井千次の系譜なんだけど、
底辺に漂っている苦いユーモアは後藤明生かなあ。
源流はゴーゴリカフカかも。
男の勤務する薬品会社は、外資の波をもろに受ける。
不慣れなアメリカでのM&Aビジネス。
万事不快調な『島耕作』ってのもある、ある。
男と入れ替わりに娘がアメリカへ留学する。
わが家で男は背後から妻の肩をつかむ。
ハッピーエンド、めでたし、めでたし。
ぼくには到底そうは読めなかった。
映画なら、何だろう。やっぱり、成瀬巳喜男だ。


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