明日のメディアのために−その1

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

『新世紀メディア論』小林弘人著 読書メモ−1

ぼくは、仕事関連の本じゃないと、
あまりポストイットはしないんだけど、この本は違った。
貼りながら読む。読みながら貼る。結果、ポストイットだらけ。
気持ち的に言うなら、はじめは寝そべって読んでいたのに、
最後には正座して読んでいた。

この本のレビューの方向性は、2つある。

(1)紙とWebの垣根をとっぱらったメディア展開を先駆けてきた作者の
いわば商売のツボや肝を知ることができる。
ゆえに、ギョーカイ関係者には参考書として必読と言えよう。

(2) 作者の実践してきたことからこれからの編集者、出版のスタイルが
提示されている。スタイルと書くと表層的に捉えられるかもしれないな。
心構えか。作者は「魂」と述べているが。
ネオ編集者のバイブルというのは、大げさかもしれないが、シビれる。

で、(2)の方で、レビューを進めていくことにする。

「多くの人たちにとっての出版とは、取次機構を通して全国に
バラまく紙の雑誌や書籍、新聞しか指していないような気がします」

確かにそうだ。ところが、

「いまではコンテンツが紙という容器より飛び出て、
インターネット上における雲(クラウド)として遍在しています」

たとえば新聞社からのニュースは、携帯電話やパソコンで読む。
ヘッドラインだけでも読めば、あとはもう大元の新聞は読まなくてもよい。

「これまで専業者でなかった誰かと競合するような、
すぐにメディアを立ち上げられる時代を
「誰でもメディア」の勃興期として捉えています。
この「誰でもメディア人」たちは、
発信者であると同時に、受信者なのです」

発受信者とは、インターネット上でのプロシューマーの如き存在なのだろう。
プロフェッショナルとアマチュアの差がつきにくくなる。
非の打ち所のない立派な文章だけど、
月並みな内容、稚拙な文章だけど、読み手に気づきを与える内容。
どちらを選ぶだろうか。

「今後の企業活動におけるメディア戦略は、「PR」よりも、「ストーリーの提供」」
すなわち「「企業が言いたい情報」の提供ではなく、相手が読みたいストーリーを
提供することです」

ユーザーオリエンテッドってことか。

「優れたストーリーを提供することさえできれば、
多くの人たちがそのストーリーを中心にメディアを創出し、
さらに大きなストーリーを紡ぐことができる、
という可能性のことです」

作為的、意図的じゃなくて自然発生的。本来の祭り状態。

「実は雑誌社が気づいていないのは、信頼に足るはずだった自分たちの媒体が、
出稿企業へのご機嫌伺いにより、提灯記事のオンパレードとなり、
それをマニアたちに見破られていたりすることです」

雑誌が(新聞も)雑誌の売上げと広告収入の売上げの2本柱から
成り立っているわけだから、難しいんだろうね。
でも、読み手に眉にツバつけて読まれているんじゃねえ。

作者はその打開策の一手立てとして「レビュード・コム」を挙げている。
「レビュード・コム」とは「製品レビューを載せたポータルサイト」。
amazonや価格ドットコムよりも、
プロもしくはプロ並みのアマによるレビューが立つサイト。
リアル店舗だと専門的な知識を有した店員と品揃えが充実した
東急ハンズのオンライン版のようなものか。

ちいとも(2)の方向性じゃないな…。


読書メモ−2へ続く(予定)


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