インタビューの教科書

悪党の金言 (集英社新書 475B)

悪党の金言 (集英社新書 475B)

職業柄、インタビューは、たまにする。
で、幾つになってもうまくない。
うまくならないから、
せめてその人の著作や資料を事前に綿密に読むとか、
インタビューではよく笑おう、相槌を打とうとか。
そんなことを心がけている。
インタビューの名手になる必要はない。
よい原稿が書ければいいのだから。そう、慰めながら。
ICレコーダーは不安なので、カセットレコーダーも用意する。
インタビュー中、メモを取らない方がカッコいいんだけど、
心配性なので、ノートにメモを取る。
速記はできないので、キーワードというか断片を書きなぐる。
後日、そのノートにテープチェックしたものを
色の違う水生ボールペンで書き込む。
文字数がさほど多くない場合は、これを雛形に原稿に仕上げていく。
できれば記憶が新しいうちに。


『悪党の金言』足立倫行著、またたく間に読了。
いまは亡き『PLAYBOY日本版』に掲載された
インタビューから作者が選んだもの。


保阪正康
内田樹
佐藤優
森達也
島田裕巳
田中森一
○溝口敦
重松清


いやはや、豪華布陣ではないか。
いい意味で一筋縄ではいかないインタビュイーばかり。
インタビューの名手(もちろん原稿も素晴らしいが)である作者が、
いかにアンタッチャブルな部分を聞き出すか。
丁々発止のやりあい。ジャブの応酬。
凡庸なインタビュアーだと、とおりいっぺんのことを聴く。
すると、相手は、力量を見抜いて軽く流す応答で終わってしまったりする。
「好意」を伝えながら、本音を引き出すか。


「きわどい質問」をして「それがうまくいくと、作品としての
インタビューの世界が膨らみ、とても面白い記事になる」

その8本が並んでいる。ただ長いだけではない(400字詰めで30枚だそうだ)。
その人、人柄が鮮やかに再現されている。
ぼく的には、内田樹センセイがなぜ、かようにフェミニズムを叩くのか。
ずっと疑問だったのだが、その答と思しきものが述べられている。
ふだん、書き言葉で理論武装の鎧を着ている面々が
素を見せる瞬間がある。
そこを作者は、逃さずに、さらに脱がせにかかる。


PLAYBOY日本版』は、確かに金のかかる贅沢な記事が載っていた。
できれば新書版ではなく『PLAYBOY日本版』のサイズで読みたかった。
さらに注文をつけるなら、ノーカット、テープ起こしの原稿が読みたい。


あ、あと、レコーダーをオフにしてから、
いい話が聴けることが多い。あわてて、ノートに書き込んだりする。
最も面白いのは、オフレコの話で、これは、取材者の役得、ご褒美。


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