福袋

『アイロンと朝の詩人 回送電車3』堀江敏幸著を読む。
小説とエセーの境界がない(別になくても一向に構わないが)作者のエセー集。
ある期間あちこちに発表したものを、がさっとまとめたもの。
割りと長いものから、短いもの。身辺雑記から文学評論までバラけてはいるが、
どこを読んでも堀江印。お買い得福袋のような一冊。
あれも入っている、これも入っている。
つい、仕事の手を緩めて一気に読んでしまう。


回送電車シリーズのカバーは、ずっと北園克衛でいくのかな。


作者はかつて明大理工学部の教授を務めていたが、
芥川賞作家と明大理工学部の教授の二足のワラジを履いていた
先輩にあたる(同郷でもある)小島信夫との交流を書いたものが印象に残った。


ビンボーくさくないおしゃれな私小説とでも呼べばいいのだろうか。
作者が大学受験で上京した話などを読むと、
沈殿していた記憶が浮上してきて、心が甘くなったり、苦くなったりする。
小沼丹木山捷平(木山捷平文学賞を受賞しているが)あたりのユーモア(相応しい言葉がない)にも
通じる。
昨今、大きな物語の復権などと一部で言われているが、
奇を衒わない小さな世界の文学らしい文学も、たまに読むとほっとする。


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