裸の王様

太陽 [DVD]

太陽 [DVD]

2月に取材した原稿の修正を行う。
すっかり内容を忘れてしまい、
取材ノートを読み返したりして、意外とてこずる。


昨夜、話題となった『太陽』を見る。敗戦前後の昭和天皇を描いてあるのだが、
舞台劇のようなセットの中でひっそりと展開していく。
なにか見てはいけないものを見ているような感覚にとらわれるのは、
やはりタブーを犯していると思ってしまう
ぼくの中に存在している日本人的なるもののなせることなのだろうか。


東京は廃墟と化し、人心は荒廃しているのに、
宮城の中は静けさ、冷たさに満ちている。
延々と迷路のような地下道(防空壕)が出て来るが、
蟄居というよりも幽閉されているように思えてくる。


下手すりゃ極刑だってあるわけだから。
なのに、なんだかすべてを他人事のように振る舞い、
淡々と決められた日課をこなしていく。
軍服、白衣、スーツ、正装。
衣裳を変えるごとに、なんだか正確が違うように見える。


それまでの現人神(あらひとがみ)から一転しての人間宣言
日本の頂点に立つイグニティと時折、子どものような無邪気さが
同居している。
特に有名なマッカーサーとサシで会見するシーンとか。


イッセイ尾形は、巧妙に演じている。
口をもぐもぐさせて、イッコク堂の「宇宙衛星中継」ネタのように、
言葉があとから発せられるあたりは、随分と練習をしたのだろうか。


「戦争になったのは、オレのせいじゃないもんね」的コメントも、
実のところはそうだったのだろう。でもなあ…。


皇居からGHQ本部まで随分遠距離に設定されていたが、
(実際にはほんの先なんだけど)
あれは一種の心象風景のようなものなのだろう。


トップに君臨する(正しくはしていた)ものの孤独さが
ひしひしと伝わってくる、寓話のような映画。
某国の将軍様や塀の中の某新興宗教の尊師にも
同じフォーマットが使える。ただし、おもしろいかどうかは知らないが。


ラストに出てくる桃井かおり扮する皇后との光景は
微笑ましい。救いとなっている。


付記


桃井かおりは何をやっても桃井かおりなのだが、
このハッチャキ(死語か)ぶりが、王室皇族っぽくてよいような気がする。


付記の付記


最近、そっくりさん映画(命名―妻)が流行っているけれども、
どうなんだろ。それとリメイクとマンガ原作モノものか、
TVドラマの二番煎じ。やっぱり、コンテンツ不足なのだろか。


付記の付記の付記


中学生の頃、牡丹園が自慢の町に住んでおり、
昭和天皇が見に来られたことがあった。歓迎の儀式に借り出され、
駅前で黒塗りのクルマに乗る天皇陛下のご尊顔を拝したことがある。
なぜかそのとき振っていた旗は読売新聞だった。ま、朝日新聞じゃないよな。


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