対立図式

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)

『バッテリー』あさのあつこ著を読む。
熱血スポ根ものと思ったら、ちょっと違っていた。
主人公は天才中学生ピッチャー。ピッチャーになるために生まれてきたような少年。
タイプでいうと落合博光やイチローかな。サッカーの中田がいちばんピンとくるかもしれない。
天才ゆえ周りのことは気にしない。
スポーツのできる子は基本的に頭もよくて、スマート。
せっせと走り込みなどを日課にしているが、決して泥臭くはない。
このあたりがいま風なのか。
ホップするような剛速球を投げる主人公になった気分になれるのは、まんざらでもないし。


「ドラマは対立にある」という名言をインタビュー時に吐かれたのは脚本家のジェームス三木
この作品は、文字通り対立だらけ。
主人公と母親、主人公と病弱な弟、主人公とバッテリーを組むキャッチャー、
主人公と中学の野球部の監督、主人公と野球部の先輩たち、
主人公と他校のスラッガー…。


かつては甲子園出場経験豊富な高校野球の名監督だった祖父、
からだを壊して岡山の田舎にある妻の実家に身を寄せることになった父、
なにかと干渉したがる母(オカン)。過干渉をぼくも思い出してイラッとした。
虚弱児童だけど、兄と同じ野球を志す弟。
チームワークを強制する野球部監督の先生。
統率力を発揮するキャプテンは『スラムダンク』のゴリにも似ているし。
ボーイミーツガールならぬボーイミーツボーイ。
新しい中学の野球部にあらわれる部員や先生たちなどサブキャラの造形もなかなか魅力的。
つい自分の中学時代を投影してしまう。
ぼくはバレーボール部だったけど。
小説の核は、王道のスポーツもので、年齢・性別・職業を問わず共感できるはず。
第一巻目はケータイではなくまだポケベルの時代。


つっこみどころはいろいろあるが、ともかくグイグイと読ませる。
でも、ぼくは同じ野球ものなら、ちばあきおの『キャプテン』の方がしみるね。


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