ヤルジャン

ミステリアスセッティング

ミステリアスセッティング

『ミステリアスセッティング』阿部和重著を読了。
やるじゃん!で感想は終わってしまうんだけど。
当初ケータイ電話サイトで連載されていたので、
文体とストーリーに留意したとかいうインタビューを朝日新聞(?)で読んで、
どんな文体になったのかなと気になっていた。
改行が多く、文章も作者にしては饒舌ではなく、
かといってライトノベルほどでもなく、
ほおほお、こういうスタイルなのねと、ページをめくる。
以下、たらたらとひとりよがりの感想を。


ヒロインは、非-モテ系のミツグくんならぬミツコちゃん。
ドジでノロマで利用されるだけのイジメラレっ子というヒサンな前半部は
痛いままにゆるゆる展開。
アブないスーツケースを押しつけられた後半部は、
打って変わってテンポが良くなる。


ネタバレしたくないんでそのへんは注意して書くけども、
その女の子が結局、最後に大きなことを成し遂げる。
なんか潔くて。なんか一生懸命で。なんかけな気で。
たとえば『最終兵器彼女』とは設定が違うけれども、おんなじニオイを感じたり、
ゆるゆるの前半部の自虐ギャグめいたエピソードって意外とガーリッシュぽいかもしれないし。
うちの子どもが大好きな少女漫画『君に届け』椎名 軽穂著にも共通項があるし。
朝の満員の地下鉄でサリンがぶちまかれて以来、
終電間際の地下鉄に乗ると、ひょっとして向かいのオヤジが突然毒ガスかなんかばらまくかもしれないと
思うこともある。それって被害モーソーかな。毒ガスじゃなくてゲロだったりして。
荒唐無稽の破滅モノって感じはなくて、それなりのリアリティをぼくは感じた。
んでもって楽しかった。
純文学のライノベ化、ライノベの純文学化とか、そういうことはヌキにして楽しめた。


彼女は吟遊詩人をめざして、音楽専門学校の作詞家コースに進んだけど、
結局、彼女の自作の詩ってあったかなと思ったら、
生きた証しが一篇の叙事詩そのものだったわけだ。
映画化するなら、アニメーション化、希望。
三茶あたりにいそうだよ、こんなコ。


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