手間仕事

対話の回路―小熊英二対談集

対話の回路―小熊英二対談集

原稿を予定通り送る。
『対話の回路』小熊英二著を土日の空いた時間に、ささっと読み、読了。
村上龍島田雅彦上野千鶴子の対談が「ほお」と思わせるものが多かった。
作者は学者になる前、「出版社に勤務」していたそうで、
このあたりが並みの学者の対談とは違う隠し味なのだろう。
対談本もピンからキリまであるけれど、この本は、かなりピンの部類に属する。
他の著作も厚くて濃いんで集中して読みたいから、年末・年始本にはいいかも。


あとがきに記述してある作者の対談へのノウハウや心構えは、
似たような仕事をしている人には一聴、一読に値する。ちょっと二ヵ所だけ引用。

「私は対談の出来は、事前の準備で三分の一が決まり、さらに実際の対談に臨んでの
対話の良し悪しで三分の一、そして対談を誌面に掲載するために整理する作業で
三分の一が決まると思っている。−略−整理次第で対談の最終的な出来映えは大きく変わる」

「対談の整理という仕事は、それに手間をかければかけるほど、読者の目には、自然な会話が
円滑に行われているようにみえる形態になっていくものだ。つまり、労力をかければかけるほど、
労力の形跡が消えていく作業である」

「労力をかける」ことは、でっちあげや捏造とはまるっきり違う。
せっかく生身の人に対談や取材をするのだから、ネットや新聞・雑誌など既出の情報ではなく、
そのときの空気なり、人となり、雰囲気を伝えるものでなきゃ。
以前、同じインタビューをもとに3人で同じ文字数で原稿を書いたことがある。
三者三様でおもしろかった。


人気blogランキングへ