いも・たこ・ブランド

ブランドの条件 (岩波新書)

ブランドの条件 (岩波新書)

『ブランドの条件』山田登世子著を読了。


ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルと人気ラグジュアリー・ブランド御三家を題材に
それぞれの出自から隆盛を極め今に至るまでの戦略など、ブランド神話を当時の文化・風俗史を織りまぜながら
展開していく語り口は、バルザックやゾラなどの研究者でありかつ、
モードやブランドに造詣が深い作者の面目躍如といったところ。


かつてのルイ・ヴィトンは、貴族が愛好して召使が持参するものであったが、
「貴族のいない国」で、現在は男性が女性へ貢ぐ、捧げるものとなり、召使の如く、持ち運ぶものとなった。


木箱製造業者だったヴィトンと馬具職人だったエルメス
両社はそれぞれその伝統技術、優れたクラフトマンシップを土台に
次々と新しいモードを生み出すための新しい血を導入した。
一方、シャネルはいわば新参ブランド、ベンチャー企業で、伝統のない分、
大胆なアヴァンギャルドを売りにした。モダンとポストモダンのような。

「フォードのように大量生産される、大衆のための服−略−シャネルはそれを肯定した」

シャネルの発表したイミテーションのアクセサリーは、その白眉たるものだろう。
「ヴィトンやエルメスが本物主義」に対して「シャネルは偽者主義」。それに関する記述。

「シャネルは、その「本物」を輝かせるのは、偽者なのだということを知っていた。
偽者は、本物を愚弄しつつ、かつ本物を価値化する。本物しか存在しないというのは、
いわば鏡をもたない美女に等しい」

この本に出てくるが、一時、スリッパからエプロンから魔法びんから多彩な製品にブランドロゴがついたものが
持てはやされていた時代があった。しかし、ライセンス契約はブランド遺産を食い尽くすことになってしまった。

「リアル・ブランドの成功は、『変化しない価値』と『変化する時代に適合するファッション性』とを
持ち合わせるという矛盾をいかにして克服するかにかかっています」
(『私的ブランド論』ルイ・ヴィトン・ジャパン社前副社長秦氏の言葉)

「何も変わらないためには、すべてが変わらなければならない」

作者が映画「山猫」からの引用したセリフが結びの文となっているが、
これはブランド、企業ばかりか個人にも当てはまることだ。
ついでに、関連して過去に書いたレビュー2本をreview japan「自動筆記」 より転載。


『ブランド力』 山田敦郎 クリムコブランドマーク研究班

『ベルナール・アルノー、語る ブランド帝国LVMHを創った男』 ベルナール・アルノー 聞き手イヴ・メサロヴィッチ 杉 美春訳


人気blogランキングへ