なにゆえに

手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ)

手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ)

いま話題となっている『手塚治虫=ストーリーマンガの起源竹内一郎著を読んでみた。
読まないで、あーだ、こーだはいいたくないんで。
最初の数ページを読むだけで、夏目房之介いわく「つっこみどころ」満載の本だった。
なるほど、こりゃ、斯界の人たちは怒るよな。ぼくは熱烈な手塚ファンではないが、ムカムカきた。


作者は漫画原作者もしているし、演劇にも造詣が深い。
「手塚は学際的教養の巨人である」ゆえに、学際的視野を持っていない人間でなければ、
正統な漫画評論は書けない。
いままであった漫画評論は「ラブレター」のようなものだったと。
ケンカを売っているのはわかる。意気込みもわかる。
でもなあ、肝心の内容が。


資料を揃え、まとめてみました。どうだ、すごいだろ。と、いわれても、
そっから先だよね。どう自分の考えなり、発見なり、なんなりで論考にしていくか。
いい意味でも悪い意味でも総バナ的。なーんの驚きも、ない。
しかも、これが学位論文をベースにしたものとは。
こんなものなのだろうか、博士になる論文って。賞がもらえる本って。
版元が講談社なんで手塚の図版が豊富に掲載されており、
それだけ読む、眺めるのも楽しいかも。


ストーリーマンガとギャグマンガという二項対立図式は、もういいって感じ。


ここあたりご一読あれ。


夏目房之介の「で?」 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]
『手塚〜起源』授賞「問題」について


伊藤剛のトカトントニズム
サントリー学芸賞事件+九州大学論文博士審査にまつわる疑惑


蛇足ながら、2点ばかり。

○作者は手塚の漫画の新しさは漫画をかく道具を筆からペンにしたことだと述べている。
手塚の息子の手塚真の妻である漫画家の岡野玲子は、いま、筆(面相)で漫画「妖魅変成夜話」をかいている。
たまたま見ていたNHKBSの『マンガノゲンバ』で紹介していた。
あの微妙なカスレ具合やグラデーションは、てっきりパソコンでかいていると思ったら、
筆と墨(硯ですった本物の墨)で濃淡を描きわけたトレーシングペーパーの版を重ねているそうだ。超アナログ。

○やたら手塚治虫の絵が下手だ(特に初期)という論調が目につくけど、
なんか不愉快。失礼じゃないか。その論拠を明らかにせよ。
ともいたくなる。

一応、読んだんであーだこーだといってみた。


人気blogランキングへ