背中合わせの喜劇と悲劇

 

 

桜の園/プロポーズ/熊』チェーホフ著 浦雅春訳を読む。
『かもめ』で戯曲を読むのに少しはなれたようだ。

桜の園
モスクワから美しい桜の園にある屋敷に戻った女性当主。当主の養女と相思相愛らしい商人は屋敷も桜の園も更地にすることを提案する。
まもなく広大な地所は「借金のかた」で競売に。
彼は女性当主の農地で働く農奴の子どもに生まれ、商人で成りあがった。
景気が良かった頃の美しい桜の園の思い出。
どうにもならないことは知っているが、嘆く当主。
桜の園はその商人が競り落とした。彼は桜の園を別荘地として売り出すようだ。
ふと田舎の大地主が戦後の農地解放で田畑を小作人に譲り、新規にはじめた商売が
うまくいかず、結果的に没落した、そんな悲哀を感じさせる。
使用人のみが残る古い屋敷。
終幕のト書きに「木を伐る斧の音だけが聞こえる」とある。
古いものの崩壊とそこから芽生える新しいもの。
 
『プロポーズ』
「一幕の滑稽劇」。正装して父親に娘との結婚の許しをもらいに来た男。
父親は歓迎する。次は彼女にプロポーズをしなければ。ところが、土地のことで
口論となる。そこに父親が現れる。結婚を承諾したが、土地の所有権となると別の話。
売り言葉に買い言葉。裁判沙汰になりかねない勢い。
父親から男の結婚話を聞いた娘は手のひら返し。男が好きだったと。
ようやくお互いの気持ちが通じ合う二人。今度は、どちらの飼い犬が可愛い、賢いかで
ケンカとなる。東京03のコントで見たい。
 
『熊』
「一幕の滑稽劇」。夫に先立たれ、ショックのあまり引きこもりとなった未亡人。
そこへ退役軍人の地主が登場。亡き夫への借金の取り立てにきた。
銀行への支払日が迫り、払ってくれるまでは動かないという。
未亡人と地主のすったもんだ。地主を「荒くれ熊」と罵倒する。
地主は決闘を申し込む。応じた彼女の心意気に魅了される。彼女の方も。
「あなたなんて嫌いよ!でも、いや…行かないで!」イエス、フォーリンラブ!(byフォーリンラブ)