梅雨時でもマスク、つらい

 

奪われた家/天国の扉 (光文社古典新訳文庫)
 

 「Social Distance」が「Social Death Dance」に聴こえたら

耳鼻科よりも神経科に行った方がいい。
 
アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短篇集』ルゴーネス著に続いて
『奪われた家/天国の扉』コルサタル著 寺尾隆吉訳を読む。
今年はアルゼンチン幻想文学を読む年になるかも。
ま、感想というか、あらすじというか、そういうのを。
 
『奪われた家』
「曽祖父母の代」から住んでいる古くて大きな家。
いまは「四十代」になった兄と妹が静かに暮らしている。
その家がなにものかによって、どんどんスペースを奪われる。
そこには大切なものや思い出のつまったものもある。
なにものかはわからないが、危険を感じて兄妹は、
長年住み慣れた家から脱出する。
短い話でオチもないが、読み終えてから怖さがひろがる。

『パリへ発った婦人宛ての手紙』
「パリへ旅立った」女性のアパートに引っ越した私。
突如、嘔吐に襲われる。吐いたのは、子ウサギだった。
マジシャンじゃあるまいし。次々と彼女は口からミニ万国旗のように
子ウサギを吐き出す。
全部で「十羽」もの子ウサギが、アパートの家具や絨毯を食い荒らす。
また嘔吐をもよおし、かわいらしい子ウサギが…。
 
『天国の扉』
亡くなった彼女がキャバレーで踊っている。
まさかとは思うが、確かに似てはいる。似てはいるが、恋人ではない。
彼女が開けていってしまった「天国の扉」は、当然だが、
そのキャバレーにはなかった。
紙面からアルゼンチンタンゴの官能的な音と激しいエロチックなダンスが目に浮かぶ。
恋人を失くした現実、深い対象喪失がひしひしと伝わってくる。
 
『動物寓話集』
夏休み、預けられた少女。そこには好奇心旺盛な男の子がいた。
ボウフラを顕微鏡でのぞいたり、
二人でアリを捕まえて飼育箱に飼ったり。
タツムリを観察したり。
微笑ましいのだが、どこか薄気味悪さも感じる。
庭にトラが棲息しているって、どんな庭なんだろう。