「貴方」と「あんた」、手紙と日記

 

最高の任務

最高の任務

  • 作者:乗代 雄介
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

宝くじを買うつもりでラジオCMコンペに応募する。
このへんの桜はほとんどまだつぼみか。
 
『最高の任務』乗代雄介著を読む。
2つの作品からなる。
 
『生き方の問題』
 
「僕」と「二歳年上の」いとことの話。 
「ジュニアモデル」などになった早熟のいとこはまぶしい存在。
核となるのは手紙。
「貴方」と二人称で呼びかけるのは
ミシェル・ビュトールの『心変わり』か倉橋由美子の『暗い旅』へのオマージュか。
 
足利の祖母の家での再会。
彼女はこぶつきバツイチとなっていた。

山登りをする二人。
神社でモーションをかけてくる彼女。
天性のフラッパー。小悪魔(死語)。

エモいかつエロいシーンがこと細かに手紙に書かれる。
気になるいとこ同士。

家の長である祖母は強権をふるって愛があろうがなかろうとも
二人を夫婦にさせようと願っている。なぜか母系社会。
 
『最高の任務』
 
これは言うなれば阿佐美景子ちゃんシリーズの最新作。
『十七八より』では女子高生、『本物の読書家』では女子大生になった彼女。
本作では大学を卒業したばかり。

ファザコンやマザコンは知っているが、彼女の場合は叔母コン(コンプレックス)。
亡くなった叔母の影響が大きい。

核となるのは叔母からもらった日記帳でつけはじめた日記。
「あんた、誰?」が書き出しの日記。
余談。『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレーの「あんたバカぁ!?」を思い出す。

失われし叔母との時間を求めて足利・渡良瀬方面へ家族旅行する。
 
太宰治はファンの女学生から送られてきた日記をもとに『女生徒』を書いたそうだが。
作者も阿佐美景子ちゃんへのなりすましぶりがやけにうまくて。
「貴方」と「あんた」。英語では同じ「You」。
この日本語のニュアンスの違い。
 
言いたかったことが違う本にあった。

「(マネは)版画や写真など複製画像が氾濫する時代を背景に、出自や次元の異なる多様なイメージの断片(典型性を帯びた形態に執着するゆえに古画からの引用が目立つ)を自在にアッサンブラージュし、「現実」のシュミラクール(模像)を創出した」
(『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』三浦篤著より)

 

なんか手法が似ている。