横浜 光る街

 

やっさもっさ (ちくま文庫)

やっさもっさ (ちくま文庫)

 

 

確定申告の準備にかかる。
excelで経費などの計算。
細野晴臣の『住所不定無職低収入』が
口をつく。

『やっさもっさ』獅子文六著を読む。
主人公・志村亮子は混血児たちの孤児院を切り盛りしている。
雇われオーナーとして日々経営に追われている。
慈善事業ゆえ資金の捻出やハーフの子どもたちへの根強い偏見などもあって
悩みはつきない。
実質上のオーナー・福田嘉代のモデルは「エリザベス・サンダースホーム」の澤田美喜。「岩崎弥太郎の曾孫」とか。
 
著者は実際にホームを見学して澤田に取材したそうだ。
 
主人公やホームに集まって来るエセ文化人、怪しげなアメリカ人実業家たち。
養子である彼女の夫は敗戦前は有能なビジネスマンだったが、
敗戦のショックか、ホームの鶏舎で鶏の飼育が生きがいとなっている。
妻に内緒で繁華街へ出向いては、
街の女性たちが外地にいる米兵との手紙の翻訳や代筆で
小銭を稼いでいる。
 
ホームの経営に疲れ、死に体の夫に愛想を尽かしかねない彼女は、
アメリカ人実業家とデートを重ねる。揺らぐ、心。
 
夫はひょんなことから再起を決意する。新興企業の専務に迎えられるが。
 
海千山千の人物たち。その描写が冴える。うまい話には裏がある。ダマし、ダマされ。
離れ離れになると思われた夫婦の線が最後には結ばれる。うまいなあ。
 
南京街、伊勢佐木町馬車道、野毛などその当時の横浜のエキゾチックさやモダンさが全篇に漂っている。
 
サブキャラで病気の妹の高額な治療費のためにプロ野球選手になった男が出て来る。
ほんとは、野球は好きではなくて生き方も不器用。彼がおつきあいしている女性が崎陽軒のシウマイ娘になって駅で弁当を売っている。こちらもギャラがよいから。
男はチームの遠征の行き返りに彼女からしか弁当を買わなかった。それが好印象になって。
 
おっと、崎陽軒シウマイ弁当が食べたくなってきた。
 
母さん、崎陽軒が「ダイヤモンド・プリンセス号」に寄付した4000個のシウマイ弁当
どうしたんでせうね?