『広場』崔仁勲著を読んで石原吉郎を思う年の瀬

 

広場 (CUON韓国文学の名作)

広場 (CUON韓国文学の名作)

  • 作者:崔 仁勲
  • 出版社/メーカー: クオン
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: 単行本
 

 


25日に家族でクリスマスの会をする。
つってもご馳走を食べてカバ ロゼを飲む。
景気のいい頃は、奮発してシャンパンを買ったが、
カバやスプマンテでも何ら遜色はない。
いつものケーキ店で予約なしで買えたブッシュ・ド・ノエル
おいしゅうございました。

『広場』崔仁勲著 吉川凪訳を読む。
朝鮮戦争によって北と南に分断された国。
主人公は「釈放捕虜」となる。
 
訳者解説引用。

「釈放捕虜とは、朝鮮戦争の時に韓国内の捕虜収容所に収容され、1953年の停戦で釈放された元人民軍(北朝鮮)兵士を意味する言葉だ」

 3つの選択肢を提示される。

a.北朝鮮へ帰る。
b.韓国に行く。
c.第三国へ行く。
結局Cを選ぶ。
 
韓国ではサヨクとみなされ不当な扱いを受けた。
父親がいる北朝鮮に淡い期待を抱いたが、
共産主義の理想と現実のギャップに悩む。
恋人は戦争で亡くす。
北に還れば
帝国主義の黴菌に感染した奴だと言われ」
南は
キルケゴールふうの言い方をすれば、実存しない
人たちの広場ならぬ広場だった」
 
国はあるが、自分の居場所がない。
まさに宙ぶらりんの男。
 
恋人から戦争への意見を求められてこう話す。
 

「僕ならこんな馬鹿なまねはしない。戦争なんてしない。僕なら、こんな内閣命令を出すね。朝鮮民主主義人民共和国のすべての人民は、人生を愛する義務を負う。愛さない者は人民の敵であり、資本家の犬であり、帝国主義者たちのスパイだ。何人(なんびと)といえども、愛さない者は人民の名において死刑に処す。そんなふうに」

 

甘ちゃんだろうか。
 
国はあるが、自分の居場所がない。
詩人の石原吉郎と重なる。
シベリアのラーゲリ(捕虜収容所)で命からがら帰国したが、
「シベリア帰り」と不当な差別を受ける。
戦前、戦時下の日本と戦後の日本。
 
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