詩わす 詩あわせ

 

STUDIO VOICE vol.415

STUDIO VOICE vol.415

 

 

STUDIO VOICE「We all have Art. 次代のアジアへ――明滅する芸術(アーツ)」を購入したが、
分厚くてテキスト量も大盛ですべて読んではいない。
 
気になった斎藤真理子の「茨木のり子と韓国詩」という短文を読む。
茨木のり子の詩は、代表作を読んだ程度だが。
そこで茨木のり子がハングルを学び、詩を翻訳したことを知る。
 
韓国現代詩選

韓国現代詩選

 

読みたいなあと思って、ようやく、
韓国現代詩選茨木のり子訳編を読む。

当たり前だけど訳文がどれも素晴らしい。
独断と偏見でチョイスした詩と詩人についての
解説も親切で、不慣れな読み手を詩の世界に導いてくれる。
一つだけチョイス。

ファン・ミョン・ゴルの「三寒四温人生」を引用。
 
三寒四温人生
 
ひとかけらの土地がなくても
ひときれの木の表札がなくても
かなしがることも くやしがることもない
隣室の金兄さんがそうだし
向いの崔さんともそうだし
村の張三李四がみんなそうじゃないか
先に逝ってしまった友チョングァニのことを思ったら、
みんな消滅してしまった山番地の尹(ユン)氏一家のことを思ったら
まったく俺の苦労なんかものの数じゃない
升で米を 個で練炭
買うほどの暮しぶりじゃあるけれど
三食欠かすこともなく火も切らさないから
女房もいるよ
子供もいるよ
腹を満たしてあたたかなオンドル部屋のアレンモクにちびどもを眠らせて
やおら女房を抱き寝すりゃ
この運勢 上々吉でなくてなんなんだよ
しわくちゃにまるめてポイと捨てる人生じゃない
捨てたとて拾われもせんゴミみたいな人生だが
こらえるので
堪えて生きてみるのだ
ならば三寒四温のわれらが冬のごとく
どうやらこうやら なんとかかかとか 凌いでゆけるのだ
意地の悪いノルブのようなけち野郎がいりゃ
拳骨くらわし
薔花紅蓮の継母のような女(あま)がいりゃ
罵詈雑言を浴びせかけ
ああだこうだと すってんぱたん生きてゆくのだ」

 音読してみよう。

日本語のリズムが気持ちいいですぜ。
音楽ならブルースか。
しみる。これでいいんだな。
タイピングしながらじわっとくる。
下(しも)じゃなくて。

ファン・ミョン・ゴルの解説でこう述べている。
 

「韓国の詩人たちの大きなテーマの一つは、生きることへの鼓舞であり、
それが常に長鼓(チャンゴ)のひびきのように鳴っている。
それだけ暮しはくるしいということだろうか」

 首肯、首肯。

韓国は詩が日本よりも愛されているそうで。
ネットで検索したら、いまもそのようだ。
日本の詩人にとっちゃあ夢のような国かも。

通勤電車で大抵の人がスマホを眺めている。
SNSかゲーム、音楽PV、漫画あたりか。
スマホと詩との親和性は高いと思う。
あ、短歌、俳句とも。
一駅一詩。読み直しも効くし。
 
詩ってどうなんだろう。
来てるのか、来ていないのか。