内は、冬

 

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

 

 『外は、夏』キム・エラン著 古川綾子訳を読む。

ロス(喪失)をテーマにした7つの短篇集。
しかし、それぞれにテイストは異なっている。
3篇だけ感想を。ネタバレもあるんで知りたくない人はスルーして。
 
立冬
結婚して子どもが生まれ、念願のマイホームを手に入れた。
妻ははりきって理想のインテリア空間、理想の家庭をつくろうとはりきる。
突然、子どもが交通事故で亡くなる。
昨日までは子どもの声がした部屋。
子どもが玩具で遊んだ部屋。
理想ではちきれんばかりだった妻は、
対象喪失に耐えられず生ける屍状態となる。
なんとか乗り越えようとする夫婦だが。
事故ではないが病気で男児を亡くした人がいた。
葬儀に参列したが、いたわしくてどう声をかけていいものかわからなかった。
数年後、たずねたら可愛らしい女子の赤ちゃんがいた。
 
『ノ・チャンソンとエヴァン』
小学生のチャンソンは「祖母の働くサービスエリア」で白い犬と出会う。
エヴァンと名づける。なんとか飼おうとするが、
祖母は食い扶持が余計にかかるとシブい態度。
エヴァンが病気になる。高額な治療費のためにアルバイトをはじめる。
韓国も日本と同様に動物病院は高いらしい。
ほどほど貯金ができたが、もらいもののスマホSIMカードに消える。
次はスマホケースに消える。
子どもだものなあ。衰弱したエヴァンが姿を消す。
リアルな結末。
ぼくも小学生のときに猫を拾ったが、病弱だった。
結局、父親が捨てに行った。
次は亀を拾った。亀は水槽から脱出した。
そんなことを思い出す。

『どこに行きたいのですか』
スコットランドに住む従姉」から「留守番を頼まれた」私。
夫婦で留守居役を預かることとなる。
韓国からイギリスまでは飛行機。
ロンドンからエディンバラまでは列車での長い旅。
季節は春だがどんよりした空。
かつて夏目漱石が秋・冬のロンドンの天候に神経をやられてしまったように、
アジア人にはこの気候や石造りの似た家が並ぶ街並みはつらいらしい。
とてもサイトシーイングどころではない。
旅先で、つまり外に出ると内にいた自分の状況を見ることができる。
異国でできた友人が意外なことに、Siriだった。
「アップルのiOS端末に搭載されている音声アシスタント機能」
Siriと会話する。Siriに観念的な質問する。
このあたりもっとフォーカスするとSFぽくなる。
タイトルも『ドコニ行キタイノデスカ』とすればよかったのに。

人気レストランのコース料理を味わうことと
同じような贅沢な充足感が残る。
登場人物に読み手が交信できるかどうかは
作者の力量にかかっている。
悲しみや傷みに共感する。
生き方に同調する。
傷のなめ合いは、良い意味で使われないことが多いようだが、
小説で傷のなめ合いをしても構わないと思う。
 
キム・エラン作品の拙レビュー
『どきどき僕の人生』キム・エラン著 きむ ふな訳
http://soneakira.hatenablog.com/entry/2018/07/06/121654
 
『走れ、オヤジ殿』キム・エラン著 古川綾子訳
http://soneakira.hatenablog.com/entry/2018/06/24/163820
 
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