ハン・ガンびいき-2

 

回復する人間 (エクス・リブリス)

回復する人間 (エクス・リブリス)

 

 


夏のせいだから。
原稿を書くのを忘れていた。
と、いうわけではないんだけど。
昨日から取りかかる。
一応資料を集めて読んでいたので助かった。
さっき書き終える。

『回復する人間』ハン・ガン著 斎藤真理子訳を読む。
 
病気が治るというが、そうだろうかと思う。
快癒したとしてもそれは以前の状態とはまったく同じではない。
回復ではなくて寛解が妥当なように思える。
でも諦めない以上、生きることには何ら変わりない。
 
この短篇集に出て来る人たちは
心や身体に見える傷や見えない傷を持っている。
その傷が一応癒えた人、
途上の人、まったくあかん人。
その傷みや辛さをなめ合うように読む。
ひりつく、いらつく、むかつく。
でも、グイグイ吸い込まれていく。
 
短篇3つの短い感想。
 
エウロパ
大学時代に好きだった女の子。
でも結婚が決まっていて本心を言えず。
離婚した彼女となんとなくつきあっている。
離婚後、鬱となった彼女はとにかく働く。
彼女は再び音楽をはじめ、ライブにでる。
魅力的な声と楽曲。徐々に人気が出る。
「僕」は女装して彼女とデートする。

『左手』
パントマイムで手足が意志を持って
勝手に動き出す芸がある。
そのように突然、左手が脳からの指令を無視して
暴れ回る。
社会人の常識をわきまえている妻子持ちの銀行員が主人公。
左手は本心、本音、恥ずかしい欲望を
暴露するかのようにあばれる君。
しまいには左手を葬ろうとさえする。
シュールというかSFチックな風味。

『火とかげ』
ポケモンのキャラではない。
事故により結局両手が不自由になった画家。
「左手のピアニスト」は実在するが。
苛立ち、夫と気まずい関係。
記憶もかなり喪失する。
そんなとき、旧友から写真館になぜか主人公の写真が飾ってあると。
その写真を撮った男のことを思い出す。
写真館で「10年前の」写真を探してもらう。
名前さえ知らなかった彼の電話番号も知ることになる。
その些細な出来事が彼女をアトリエに向かわせる。
「描け!」と声のない声が命じるかのように。

真夏でも冷え切った心の中が温かくなる。

TVドラマはほとんど見ないが、
『凪のお暇』は見ている。
相通じるものがある。