男女サッカーも、ヤクルトも、期待はしないが、
結果、期待はずれ。
飽きるまで同じものを食べ続ける人がいる。
飽きるまで同じ作家の本を読み続ける傾向のぼく。
『青蛙堂鬼談』の続編で各人の怪談リレー方式。
『影を踏まれた女』が、ベスト。
「影踏み」という遊びを子どものときにした。
親や先生の影をこっそり踏んでは喜んでいた。
娘が保育園に行っていた頃、こおり鬼に凝っていて。
近所の公園で行なった。
いまの子どもはしないのだろうか。
17才の少女が主人公。
夜、近所の悪ガキに影を踏まれる。
逃げ帰った彼女。
影を踏まれると寿命が縮まるといわれている。
以来、影を踏まれないように
出歩かなくなった彼女。
確かに、この娘は心の病。
祈祷師よりもセラピーなのだが。
すっかり痩せ細った彼女。
灯りに映る影が骸骨…。
ふとユングの影(シャドウ)を浮かべる。
『水鬼』
某地方の川に棲息する「幽霊藻」。
なんたってこのネーミングが秀逸。
「平家の美しい官女が落ちのびて、水を飲もうと
したらあやまって川に落ち、亡くなった」
それが「幽霊藻」になったという謂れがある。
「「幽霊藻」に触れた若い女性は祟られる」とも。
「幽霊藻」をいたずらに触らせられた女性の凶行は、そのせいなのか。
見事な着地。
『河鹿』
舶来の人形。
「右の手をあげると自然に「パパア」といふ声が出る。
左の手をあげると「ママア」といふ声が出る」。
小さな娘のお気に入りだったが、こわれてしまい、
欧州の会社に修理を依頼する。
娘はその間「流行性感冒」、インフルエンザね、で亡くなる。
「仏前に備えた人形」。夜中に「パパア」「ママア」という声がする。
こわさへのネタフリの広角さ、話の面白さ。
美しくムダのない日本語。
もはや綺堂隊の一員になってしまった。