父さん、あの自転車、どうしたんでせうね?

 

自転車泥棒

自転車泥棒

 

 

クチナシが咲いた。アジサイが咲いた。
風呂場のボディシャンプーに小さなナメクジが。

 

自転車泥棒』呉明益著 天野健太郎訳を読む。
イタリアン・ネオレアリズモの名作の如きか。
自転車窃盗団の抗争かと勝手に妄想していたが、違った。

 

突然失踪した父と盗まれた自転車。
その行方を追うのがメインの話なのだが、
そこに自転車の文化史、アジア(特に台湾とタイ)の少数民族
台湾の動物園の歴史が挟み込まれて
重層的な構造になっている。

 

盗まれた自転車の行方を追う。

台湾では自転車を鐵馬ということを知る。
こっちのほうがいいかもね。

 

富士自転車など日本や台湾の自転車ブランドが紹介される。
ぼくが小学生のとき、あこがれだったフラッシャー付き自転車は
富士ブランドに人気があった。

 

日本軍の銀輪部隊に参加した台湾の少数民族出身の男の話。
エコな乗り物である自転車は、戦時下でも活躍した。
燃料はいらない、音も静か、バラせるので移動も楽。
マレー半島を一時期君臨した自転車。
でも悪路ゆえゴム製のタイヤはパンク。
構わずイギリス軍を蹴散らしたそうな。
いたるところゴム園なのに。

 

日本統治下にあった台湾 。

ゾウ部隊が出てくる。
悲惨な話なんだけど、どこかファンタジーめいている。

 

オートバイといっしょで自転車もレストアマニアがいて
各パーツを探し出しす。なかったら自分でつくった
ビンテージ自転車を復活させる。

 

訳者あとがきで著者が自転車マニアであることを知る。

 

自転車で自在に空間や次元を疾走する最後の部分は
かなり素敵でくり返し読んだ。

 

入院している母の病院に
子どもらが集う。
失踪した父親もこっそり見舞っていたかもしれない。


同著者、同翻訳者の『歩道橋の魔術師』の拙レビュー。
http://soneakira.hatenablog.com/entry/2015/11/15/133146

 

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