奇想を競う

超動く家にて 宮内悠介短編集 (創元日本SF叢書)

超動く家にて 宮内悠介短編集 (創元日本SF叢書)


『超動く家にて』宮内悠介著を読む。
いろんなテイストの短編集。
センス・オブ・ワンダーを糸井センセイの代表作「不思議大好き」と
意訳するならば、
センス・オブ・ホラーは「不気味大好き」になるのだろうか。
それがびっしり詰まった本。
作者曰く「くだらない話」。
荒唐無稽な発想をいかにして作品に仕上げるか。
作家の力量や熱量が問われる。
以下一部の作品の感想を。

トランジスタ技術の圧縮』
これは、雑誌「トランジスタ技術」を
いかにコンパクトにするかというコンテストの話。
ナンセンスぶりにセンスがある。

『アニマとエーファ』
廃材でつくられた人形の話。
ピノキオ』なんだけど、小説を書く才能がある。
AIが近い将来過去の小説のキャラクターやストーリーを分析して
創作するかもしれない。そんなことを思わせる。
ピノキオ』からの展開がすごくて。

『超動く家にて』
チベット仏教の仏具「マニ車」をヒントにした
宇宙船「メゾンド・マ・ニ」で
起きた連続密室殺人事件。
謎を解くエラリイとルルウ、二人の探偵。
回転するスターシップに住みたいんかーいというツッコミを入れながら読む。
で、オチがそれかーい。

『クローム再襲撃』
村上春樹の『パン屋再襲撃』とウィリアム・ギブスンの『クローム襲撃』を
ミクスチュアしたタイトル。
中身もマッシュアップした感じだが、着地は見事に村上春樹風。

パロディやオマージュが行間に地雷のように埋められている。
ぼくはちょっとしかわからなかった。
あ、これはアニメにいい。あ、これはコントにいい。
あ、これは芝居向け。あ、これは映画向け。
あ、これはすぐにラジオドラマになる。
ついスケベ心を起こすのは元プランナーの哀しいサガ。

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