航海それとも後悔

ビリー・バッド (光文社古典新訳文庫)

ビリー・バッド (光文社古典新訳文庫)

 

週末は、留守居役。
洗濯物を干しに二階に行くと、
空が透き通ったような青。
飛行機がくっきりと見えた。
どこへ行くのだろう。
筋状の雲。
「磐城平の方までゆくんか」。

『ビリー・バッド』メルヴィル著 飯野友幸訳を読む。
主人公は「英国軍艦」のイケメンセーラー、ビリー・バッド。
アイドルのようだったが、上の者になぜか疎んじられる。
無垢なビリーは思い当たる理由がない。
今で言うところの「ビリー、死ね」ってなもんで
策謀により船上公開死刑(私刑)となる。

あらすじを簡単に紹介したが、
カフカの『審判』とか不条理な小説を思いうかべる人もいるだろう。
作者は実際に捕鯨船や軍艦に乗っていた。
それが『白鯨』などの作品になった。本作も。
不幸な水兵。
昔の日本の作家が翻案するなら
ビリー・バッドを薄井幸男と名づけるかも。

新訳ということもあるが、なーんか新しいのだ。
なーんか自由なのだ。
聖書の引用、作者自身の韜晦など
本筋に関係ない、なくはないけど、
その部分が独特の雰囲気を演出している。
羽根つきギョーザの羽根の部分。
わかりにくい例えか。
最後に「ビリーは手錠をかまされて」という詩が出てくる。
存命だったら高田渡に作曲、歌をお願いしたいもんだ。

遺作となった短篇。
その頃、メルヴィルは忘れられた作家の一人で
出版されるまでの経緯を解説で知って
ここの部分も小説になるなあと思った。



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