ガイシ系文学

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駅でグルカ姿の女性と男性がカートを引いていく。
この前は中国人と思われる団体がガラガラと音を立てて
住宅街に消えていった。
この辺、ビジネスホテルなんかない。
民泊しているところがあるのだろう。
ワンルームマンションやアパートの空き家対策に。
東京オリンピック前、絶好調のインバウンドブーム。
どこ行っても外国人がいる。
先日、法事で帰省したときも
街にかなりの数のベトナム人がいるという話を聞いた。
でもそれは観光じゃなくて労働だけど。

長いマクラ。
『シェア』加藤秀行著を読む。
デビュー作『サバイブ』も収録。文學界新人賞受賞作。
『シェア』は民泊をビジネスにしている女性が主人公。
アシスタント的存在のベトナム人の女の子がチャーミング。
就活中で苦労しているが。
離婚協議中の夫は、ベンチャー企業の注目オーナー。
押し出しが強く、上場も実現間近。
女性の語りで展開するが、モノローグの書き方がうまい。
女性言葉で書いた他の作品が読みたくなる。
民泊はなんとなくビジネスが成り立っているが、
やはり不審な外国人がアパートやマンションに入っていくのは
周囲の日本人の特に中高年には気に入らないらしい。
だって火葬場や幼稚園・保育園ができるのだって
資産価値が下がるとって反対なんだから。ましてや。
焼き場が町内にあると便利じゃん。じき、世話になるんだから。
おっと、脱線。

『サバイブ』は「男友達の主夫」が主人公。
ガイシ系だの、金融だの、そんなハイリスクハイリターンな世界。
高学歴、高収入、ハイソな暮らしが
いつはじけるかを覚悟しながら
自分の能力を高めていこうとする周囲と
上昇志向が限りなくゼロに近い主人公のトーキョー都心ライフ。
出てくる用語に細かい註をつけると
『なんとなくクリスタル』ぽくなる。
作者の作品を読むと
今様高等遊民と名づけたくなる。
あるいはガイシ系文学。

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