寒卵

 

『ぼくの東京全集』小沢信男著を読む。
「底本一覧」によると
1951年発表の詩から2016年のエッセイまで
60年の作家、ライターのキャリアから
選りすぐった一冊。

戦前・戦中・戦後の東京を
自身の人生から書く。
ルポ、ノンフィクション、評伝、
小説、俳句、詩作まで。
どこを読んでも名人芸の小沢印。
亡くなった父親と同年代なのに、
なんなんだこの柔らかな文体は。
ブレないスタンス。

出身校が東京府立第六中学校(現東京都立新宿高等学校)。
新宿御苑の目の前にあるが、
御苑はかつて下々は立ち入り禁止だった。
そこに忍び込んだ話。

新宿や池袋の闇市の様子や
まだ栄えていない渋谷駅前で待ち合わせをする話。

焼け野原跡の古書店
腹も飢えていたが、活字にも飢えていた人たちが
群がった話。
辻征夫や丸山薫など詩人との話。
もうきりがない。

作者が取り上げていた佐田稲子の『私の東京地図』を
読みたくなる。
池波正太郎小林信彦のエッセイが好きな人なら、ぜひ。

寒卵 東京人の 厚着かな

 

という俳句をつくったら
会社員時代、所属していた
俳句クラブの先生にはじめ褒められたが、
季重なりで撤回された。

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