猫のいない日々


10月に猫が天国に召されて12月。
明け方、階段を2拍子で降りる音で目が覚める。
黒猫なので丸まった黒いタオルが
猫に見えてはっとする。

元気なころは、時おり
憑かれたように階段を全速力で往復していた。

猫ドアをくぐって
こちらが起きるのを待って
ご飯をくれないかなとひたすら凝視していた。

晩年は猫ドアをくぐることを忘れて、
あげたご飯も忘れて
遠慮会釈なくもらうまで催促。
しまいには恫喝レベルで。

猫の額ほどの庭に埋めようかと思ったが、
笹の根っこだらけで掘るのが大変。
壁に塗りこめるのは、却下される。
ポーの『黒猫』じゃないんだから。

近所のスーパーマーケットで
うちの猫が好きだったキャットフードを
まとめ買いしている老人がいた。

玄関に手つかずの猫砂が置いてある。
どうしたものか。

路地に入り家へ向かうぼくの靴音が聞こえるようで
ドアの鍵を開けると出迎えてくれた。
ほんとうは脱出のチャンスをうかがっていたのだろう。

カップボードにそれぞれの親の遺影が飾ってある。
母は猫のひげが長くて立派ねと言った。
子どもは描く絵がほとんど猫だった。
在りし日の猫は、いちばん大きな写真立ての中に。

ガスファンヒーターの前にへばりついていた猫はいない。
2017年が終わろうとしている。

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