誰も知らないポール・オースター

冬の日誌

冬の日誌


湿度がこうも高いと
カラダはシャワーを要求する。

『冬の日誌』ポール・オースター著を読む。
数十年ぶりの著者の本。
元妻リディア・デイヴィス経由で読むとは。
この本は、自伝、自叙伝の類。
私小説と括れないこともないが、
そこはクセがすごい(by千鳥ノブ)作者ゆえ
単なる直球ではない。
結構波乱万丈。
ユダヤ人であることや
ヰタ・セクスアリス
家の履歴書、住んだところで記す思い出、
母親の回想、
なぜ母親を語るとみな、
ロラン・バルトみたいになるのか。
まったく違うんだけど、
小島信夫の晩年の小説にも似ているなと思った。

あるいは、ミュージシャンがベスト盤を出して
ライナーノーツまで自分で書く。
そこには、うまくいったこと、いかなかったこと、
影響を受けた曲や隠し味など、
当人でなければ知らなかったことが
案外ぽろっと述べられている。
これはインタビューでは出てこないか、
著者校でがっつりカットになったりする。
それにも似ている。

『冬の日誌』とは、作者自身が
人生の冬季に入ったことを意味する。
人生の春はみずみずしく、
夏は情熱的で、秋になんとなく黄昏る。そして冬。
植物でも一年草以外は、冬は次の春のために
備える季節とか言われるが、
人間も一年草で、あとは死を松の実。
違った、待つのみ。か。
ヤングな君よりも
非-ヤングな君が読んだ方が沁みる。
『内面からの報告書』も読まないと。

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