これは恋ではなくてただの痛み

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)


『すべての見えない光』アンソニー・ドーア著を読む。
ドイツの少年兵とフランスの目の不自由な少女が主人公。
ボーイ・ミーツ・ガールものとするならば、
出会うまでが長く、読み手はじらされて、ティーズされて
じりじりする。
まだか、まだか。
やっと出会えたが、戦局は転換して
連合国が優勢となる。
余りにも短い出会いと共有する時間。
少女も少年も
生と死のぎりぎりにある。
好感は抱いたかもしれないが、
恋と呼ぶまでには成熟せず、
あっけなく二人は離れ離れになる。
敗残兵となった少年の行方は。
その後の少女の人生は。

作者は少年と少女の気持ちや行動を
丁寧に書き綴る。
ラストでには、ぐっと来た。
単なるお涙頂戴なら、こうはいかない。
ひねくれた心にもしみるとは。
戦争がなければ会えなかった。
でも、戦争のせいで引き離された。
思うようにいかない最大の理不尽が、戦争。

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