また一歩

 

 

昨夜、誕生日の祝い料理を食す。
好物のニッカのウイスキーを薄い水割りで。
さすがに、ケーキまでは手が出ず、午前中、いただく。
また一歩、あの世に近づいたわけで。

『科学以前の心』中谷宇吉郎著 福岡伸一編を読む。
中谷宇吉郎著作は以前から読みたかったが、
福岡ハカセが編者とは。気になって、これを選ぶ。

雪博士、中谷宇吉郎は、「世界初の人工雪」をつくった人で知られる。
その模様を多くの人に知らせようと、映像化を試みる。
外国人にも見せようと英文字幕版をつくったり、
それが「岩波映画」の前身となったそうだ。
研究者でありながら、映画の台本をスタッフで
手探りでこしらえることがエッセイで書かれているが、
いまでいうところのベンチャービジネス経営者の資質もそなえていたようだ。
できあがった雪の映画は、皇室から学生まで多くの人を魅了した。

旧制高校時代は、理系でありながら、
当時流行っていたカントなどの哲学書も齧る。
このふり幅の広さが、なくなろうとしている。

中谷は当初、理論物理に進もうとしたが、
実験物理へ進む。
理論物理をやる頭がなかったと謙遜しているが。
そこには、恩師寺田寅彦との出会いがあった。
理論物理は脳内で思索をするが、
実験物理は臨床を重ねながら論を固めていく。

寺田寅彦は名文家で知られる。
ぼくも、何冊か読んだが、観察眼の良さとユーモアに
とりこになった。
金沢や真冬の北海道からロボットまで広範な題材。
平易な文体だが、含蓄など読み手に刺さる、
中谷ハカセの文章もまた素晴らしい。
福岡ハカセの解説「科学という詩」も素晴らしいが。

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