巡礼

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

巡礼するかのような変則コースをたどる台風10号
思ったほどの風雨ではなかった。
ただ、いつも渡る渋谷の歩道橋は、
風の通り道なので、傘が役に立たない。
朝の仕事の帰りは、迂回コースで。
バルや家系ラーメン店があった。
前からあったかな。

『恥辱』J.M.クッツェー著を読む。
教え子に手を出した大学教授。
思いもかけず彼女が大学に申し出る。
詫びれば大学に残れると言われるが、
自ら大学を去る。
未完のバイロンの原稿を完成させようと、
巡礼のような旅が始まる。
農場暮らしの娘にやっかいになるが、
そこでも災厄に出くわす。


はじめは老いてもまだお盛んな教授の行状記かと
思って読んでいたら、とんでもはっぷん。
どんどん苦みが増していく。
南アフリカの階層社会や暮らし方、
治安の悪さ。


主人公はアンモラルを気取りたいインテリゲンチャだが、
猛々しい自然やささくれだつ感情の前では、
知識はクソの役にも立たない。


『恥辱』。それは恥の上塗り。
でも、それは、誰もが踏んでいる轍。
気にしないか、気にするか。
元教授は、意外と行動派。
自分勝手と言ってしまえばそれまでだが。
どっしりとした読後感が残る。
確かに鴻巣友季子の訳は絶品。

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