敗者復活

俳句の宇宙 (中公文庫)

俳句の宇宙 (中公文庫)


『俳句の宇宙』長谷川櫂著を読む。

先週あたりか、お昼にマルちゃん正麺豚骨味を食べながら
テレビをつけたら、「課外授業ようこそ先輩」をオンエアしていて、
著者の回だった。
母校の小学校で生徒たちに俳句をつくらせるというもの。
いい加減に見ていたのだが、
まず教室で俳句をつくってもらう。
次に、野外へ出て感じたものを思いつくままに書いて
それを俳句にする。
教室内ではイメージ、野外ではいわゆる写生ってやつなのだろう。
理屈で考えるならば、野外に出て五感で感じたものの方が
優れた句になると思うのだが、違っていた。
で、持ち帰って、句をつくってもらう、確か。
イメージの定着、寝かせるともいうけど。
このあたりまで見たのだが、結末は知らない。

はじめの一冊は文庫にしよと思ったら、
ポイント(級数)がちっちぇー。

いきなり

「俳句は「場」の文芸である」


という一文に出会う。

 

「俳句は日本語で書かれるから、「場」として通用する自然は日本語が
根ざした日本の自然―一部略―に限られる。俳句の言葉がわかっていても、日本の自然をよく知っていなければ、外国人に限らず日本人でも俳句はわからないということになる」

 


屁理屈をこねるならば、「俳句」を「英文学」に、「日本語」を「英語」に、
「日本人」を「英国人」にしても、あーら不思議、成り立つ。

で、俳句につきものの季語になる。
これを束ねたものが歳時記で、かつて会社の俳句同好会に参加した折、
ぼくも買わされた。これは、単独で読んでも楽しいけどね。

季語は旧暦、太陰暦で分類されているので
違和感があるけれど。
花粉症は季語になっているのかな。

俳句は短いからいいと作者は言う。
五七五の計十七文字。で、季語を入れなければならない。
仮に季語が五文字なら、残りは十二文字。
これで表現しなければならない。

どーする。原型の句のイメージを省略、カットする。
ギリギリまでカットして、世界を読み手の想像力、読解力に預ける。
乱暴っちゃ乱暴。

 

「小説や詩の読者が近代劇の観客に似ているとすれば、
俳句の読者は能の観客に似ているのではないか」


能か。能というと眠くなって困るのだが。
ま、ほぼ無(何もない空間)から無限の宇宙をつくるあたりが
共通しているのだろう。

 

 

「人体冷えて東北白い花盛り」
金子兜太

 


いい句。この句が生まれた経緯を述べてある。
ぼくは、もっとエロティックなものを想像していた。

「寒卵東京人の厚着かな」
俳句同好会で発表した句。
季重なりということでボツでした。
気に入っているので自画自賛的に敗者復活。
冬、温泉宿に長逗留している売れない作家とお世話する美魔女な仲居さんと
できてしまった、つげ義春の二番煎じみたいな句。

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