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詩人の娘

忘れられた詩人の伝記 - 父・大木惇夫の軌跡

忘れられた詩人の伝記 - 父・大木惇夫の軌跡


『忘れられた詩人の伝記 父・大木惇夫の軌跡』宮田毬栄著を読む。
分厚いんで移動本には適さない。
就寝前など空き時間にちびちび読んだ。
大木惇夫という詩人を、ぼくは知らなかった。
北原白秋に認められ詩集を発刊。売れたそうだ。
詩集が売れるとはなんていい時代だろう。

作者は編集者を生業としていたので、
娘から見た父と編集者から見た詩人と
2つの観点からの評伝となっていて興味深い。
私人と詩人だ。

大木惇夫の生涯は、これこそ波乱万丈。
最初の妻との生活はジブリの『風立ちぬ』も真っ青。
後半は家宅の人状態で借財を重ねる。
詩を書く才能はあったようだが、経営の才能はなかったようだ。
もっとも数字に強い詩人、作家というのはそうはいないと思うのだが。
冷静に事実を述べているというか控え目の表現だが、
悪い女に捕まってしまったようだ。

戦争讃歌のような詩を書いたから
戦後新たな詩の発表の場がなかったのか。
作者は、その詩がすでに時代遅れというか
その当時のいわゆる現代詩とは違っていたからだと述べている。
文学的素養に裏づけられた詩ゆえ、
流行歌の作詞から多くの市歌や社歌、校歌の作詩を手がけていたそうだ。

もう1つの観点は作者の生い立ちから編集者になり、
この本を書くまでの経緯。
時差はあるが、姉妹で松本清張番になったりとか。
村松友視の上司だったり。
安保闘争日比谷公会堂に行き、
い合わせた庄司薫のクルマに乗せてもらい危うく難を逃れるなど
往時の出版社、文壇などがうかがえるエピソードが楽しい。

大木惇夫の詩作も豊富に引用されている。
翻訳の練れた日本語はいま読んでも新鮮、魅力的。

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