おもしろうてやがてかなしき

新編 戦後翻訳風雲録 (大人の本棚)

新編 戦後翻訳風雲録 (大人の本棚)

『新編 戦後翻訳風雲録』宮田昇著を読む。
著者は、早川書房で「「ポケミス」の仕掛け人のひとり」。
翻訳小説黎明期、個性的な編集者、翻訳家たちが
いきいきと描かれている。
何せ現場の話ゆえ、生々しい箇所もあり、読ませる。
田村隆一以下早川書房に集結した、後に作家。翻訳家となった人材たち。
ま、元々は小説や詩を書いていたが、それでは喰えなくて
月給取りになったという。
だもの、原稿にはうるさいのは、当然で
今の編集者の大半がおつかいさん(by小林信彦)となったのとは、違う。

いかにして他社に先駆け翻訳権を取るか、はたしてヒットするか。
バルザックの頃から出版は一種の博打稼業で、
この本にもその手のエピソードがふんだんにある。

翻訳家のピープル・ツリー、師匠と弟子関係、も知ることができる。

「小さな出版社の場合、組織よりも優れた能力とセンスを
もった個人に負うことが大きい。そのような編集者は、資質から
組織的に動くより、個人プレイに走りやすい。また部下への
配慮も、協力者に大きく割かざるをえない」



「「ヒッチコック・マガジン」も、編集長であった小林信彦
卓抜した企画能力と、それを紙面で印象づけることで成り立って
いたという私の記憶がある。やはり、個人プレイである」

 

これは出版に限定しただけではなくて、
企業のプロジェクトなどさまざまなものにあてはまる。
時代にシンクロした個人の才能は、
残念なことに長続きはしないが、
凡庸な集団や個人商店感覚の経営陣から
嫉妬を買い、挙句の果てに切り捨てられる。

翻訳家つながりで。
これは良いインタビュー。読みごたえあり。

連載「"不実な美女"たち──女性翻訳家の人生をたずねて」

 

vol.1 小尾芙佐さんに聞く

 


vol.2 中村妙子さんに聞く

 


vol.3 深町眞理子さんに聞く
連載中



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