過ぎ去りし日々

亡き王女のためのパヴァーヌ (新しい韓国の文学12)

亡き王女のためのパヴァーヌ (新しい韓国の文学12)

『亡き王女のためのパヴァーヌ』パク・ミンギュ著を読む。

ミステリーよりもミステリアスな事件が起きてミステリーが書きにくい。
SFよりもSFぽい科学技術が進化してSFが書きにくい。
なら、文学の王道、恋愛小説は。というと、
ひと昔前なら、若い頃に大恋愛して周囲の事情や身分の違いなど諸般の事情で
別れてしまう。かつての恋人の行方をふと考える。切なくなる。

ところが、いまやネットやSNSで検索すると、見つける可能性が大。
いいのか、悪いのか。
やはり恋愛小説も、とても書きにくい時代だろう。

なのに、作者は恋愛小説にトライした。
自分の容貌に自信がない女に恋した男の物語。
男は二十歳。1985年。
日本だと、携帯電話もパソコンも、まだ普及する前。

彼女はものごころついた頃から、いわゆる「ブス」と言われ続け、
性格まで引っ込み思案になってしまった。

若者から、はじめて好意を持たれる。心を開きかけるが、
結局、男の気持ちには応えず、身を退く。
><BR><
いないと分かっているが、彼女の部屋を探す。
心に穴の開いた毎日。

数日後、彼女から長い手紙が届く。
はじめて知った彼女の思い。

ビートルズボブ・ディランから
ラベルまで音楽が絶えない。
シュガー・ベイブ 『ソングス』40周年記念CDを
聞いていると、つい余計なことを思い出す。

ソロになったばかりの小沢健二の楽曲のリリックに
似てなくもない。

ストーリーは、ゆっくりと流れる。
途中、ダレそうになるかもしれないが、
構わず、読み進もう。

ネット時代のぼくたちは、
何事にもせっかちになりがちだ。

彼の彼女への思いは、変わらない。
そして再会する。
出会い、別れ、再会は、
恋愛小説の3点セット。こうでなきゃ。
なかなかにクサい設定なんだけど、
ピュアな恋愛小説として丸呑みしよう。

彼女がFacebookでもやっていて、頻繁に更新でも
していたら興醒め。
このあたりからひねた本好きのあなたも、
ハートを鷲掴みされるはず。
きゅんきゅんしちゃう。

で、予想もしない結末が。
そうか、そうきたか。

韓国は美容整形をメイクアップ感覚で
するお国柄だと聞いたことがある。
若い頃は、きれいでも、その後の生き方で
容貌は変わる。
彼女の顔から、素敵な年齢を重ねてきたことが
うかがえるようだ。

ガチマジ、 恋愛小説。

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