波及効果

朝露通信

朝露通信

『朝露通信』保坂和志著を読む。
作者が過ごした山梨と鎌倉の思い出話。
といってしまえば、それまでだが。
見開きごとの小さな185の話の連なり。
私小説でもなく、エッセイでもなく。
ぼくは作者と同世代なので
子ども時代の思い出は、もろかぶりする。

漫画、流行歌など。
濃密な血縁、地縁。
でも単なるノスタルジーでもないし、
昔は良かった的賛辞でもない。
それにしても作者の記憶力の鮮明なこと。
その話にインスパイアされて
すっかり忘れていたその頃のことが想起される。
一滴の朝露の波及効果。

ただ読んでいてどことなく恥ずかしさも覚える。
Facebookで同級生のコメントを読むような。
よくもないのに、「いいね!」とは言えないし。
第一、恥ずかしい。
ま、それはぼくがひねた読者ってことにすぎないんだけど。
大昔に読んだ、中勘助の『銀の匙 』とか。

あとがきでこう書いている。
このように読めばいい。

 

「小説には主役がいるとされている。この小説の主役は
語り手の“僕”でなく、僕が経てきた時間と光景だ、
それ以上に、読みながら読者の心に去来するその人
その人の時間と光景だ。人は孤立していない、
一人一人は閉じられた存在ではない。人は別々の時間を
生きて大人になるが、別々の時間を行きたがゆえに
繋がっている」

 


先日の取材メモと参考になる印刷物を読みながら、
構成と文章を考える。

香典返しのラ・フランス、おいしゅうございました。

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