三行半はGメールで

母の遺産―新聞小説

母の遺産―新聞小説

 

仕事は重なるというのは、マーフィーの法則か。

『母の遺産 新聞小説水村美苗著を読んだ。
しばらく前は、図書館でものすごい予約件数だったのに、
いまは棚に数冊並んでいる状態。

はじめて知り合ったばかりなのに、
聞きもしないのに、向こうから自分のことを
マシンガンのようにしゃべり続ける女性っているけど、
そんな感じの小説。

骨格は、パラサイト・シングルで知られる
山田昌弘の日本の家族制度の変遷を
書いた一連の著作とほぼおんなじ。
ただ新聞小説ゆえ、東京の山の手中産階級のハイソな家族を中心に、
下世話感というか覗き見のように、
日頃は隠蔽されているものを、これでもかと赤裸にリアルに晒していく。
背景までびっちり描きこんだ漫画、劇画のように情報量が多い。

モーレツな人生を歩んできた母の老い、病。
その娘たちである姉妹の軋轢、家族関係。母と娘の対立、自立。
嫁ぎ先の家柄、家風の違い。
妹は、留学先のパリで知り合ったモテ夫の度々の浮気。
夫は大学教授でテレビにも登場するいわゆる文化人。

母の遺産から―その大半は東京23区内のほどほどの地所がメイン―
高級老人ホームにかかった費用や葬儀費用などを差し引いて
姉妹で折半して残るであろう金。
それを自らの老後の資金にあてるという、実に、生々しい話。
妹は、夫にGメールで別れを告げ、
新しいマンションを購入して再スタートを切る。
つっても、あんまりすがすがしくはない。

老人ホーム関連で働いている人をごく身近に知っていて、
ときたま、この本に出てきたような話を聞きくことがある。
たとえば、元資産家の未亡人にホームにまで、小遣いをたかりに来る
若い年下のハーフのイケメンとか。

老いた親の介護や特老ホーム、看取りや胃瘻など
介護のシミュレーション小説としても読める。
中高年にはハンパないリアルな小説と読めるだろう。
あ、タイトルの「三行半はGメールで」の「三行半」が
ちゃんと読めない人は、読む資格、なーし!!

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