凍土と草原

シベリア抑留とは何だったのか―詩人・石原吉郎のみちのり (岩波ジュニア新書)

シベリア抑留とは何だったのか―詩人・石原吉郎のみちのり (岩波ジュニア新書)

 

 

『シベリア抑留とは何だったのか』畑谷史代著を読んだ。

 

石原吉郎及びシベリアのラーゲリ(強制収容所)抑留者の戦後」
を知る。


石原がラーゲリよりも日本にいることの方が、辛いと感じていたことが
垣間見えた。
いわゆる「シベリア帰り」への世間の偏見。
それこそソ連の洗脳を受けてるんじゃないかと、などなど。
その一方で、投稿した詩が与えたインパクトは大きかったようだ。
よく理解できないが、すごい。といったような。
それは、いま、読んでも同じ感想だが。
うまくは言えないが、従来の日本の近代詩・現代詩のフレームワークではない。
あるいはOSが違うような。

年代の離れた若者たちと詩の同人活動をはじめる。
若者たちには、いいおっさんに見えた石原の
持って行き場のない怒り、憤懣は伝わらなかった。
関東軍情報部にいて戦後シベリア抑留されたというと、
関東軍元参謀・瀬島龍三を思い出す。
山崎豊子の小説『不毛地帯』のモデルになった人。
同じ境遇でありながら、詩人と実業家、その生き方は一見真逆。
でも、存外、対極的に見えるようで表裏一体だったかも。

「凍土と草原」その遥か向こうの青い海原の祖国・日本。
ラーゲリを象徴するような楽曲。
トム・ウェイツの「トム・トラバーツ・ブルース」
フジテレビのドラマ『不毛地帯』のエンディング曲。
冷えた今日に。

改めて戦争がいかに人間の人生を狂わせるか、破壊するか。
再度、引用する。


「人間はつねに加害者のなかから生まれる」

全共闘運動が盛んな時代に脚光を浴びた石原の詩だが、
もう一度ブームがくるかもしれない。
なぜ?あまりにも現況にフィットしているもの。
石原がラーゲリの壁に塗り込んで隠蔽したという手帖を読んでみたい。

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