ノーカット版原稿

大学から同窓会会報が届いていた。
依頼文字数は800W。
寄稿した原稿のノーカット版を、
本日のエントリーに変えさせていただく。


後から効いてくるもの。親の小言と冷酒と哲学。

 

まずは、一節。

♪ 学校出てから30余年
今じゃしがないコピーライター
あちらこちらの広告に
つくったキャッチコピーが5万本
サバ云うなこのヤロー ♪
(「五万節」クレイジーキャッツの替え歌で)

お粗末でした。ご清聴、感謝。

気がつくと、アラカン。嵐勘寿郎じゃなくて、アラウンド還暦。
知り合いで早期リタイアした人がいる。孫ができた人もいる。
「男の顔は履歴書」と言うが、どのような顔をしているだろう。
車窓に映った顔。誰だ、このジジイ。と思ったら、ぼくだった。

長いこと、フリーランス、つまり個人事業主をしていると、
―途中会社を知り合いと立ち上げたが頓挫―
年齢を忘れてしまいがちだ。
理想は起業した企業が上場、IPOハッピーリタイアだったが、
その夢は消え、諸般の事情により、生涯現役でないといけないようだ。

久しぶりにお声がかかった制作会社に行くと、みんな偉くなっていて、
驚くことがある。

大学生の頃のぼくと現在のぼくを並べてみると、変わっているところ、
変わっていないところ、当然だけど、いろいろある。

神宮球場の外野席がまだ芝生席で、といっても雑草と土だったが。
応援団から応援させられるより、集中して野球を見たいと。
寝そべって見ていた。

進取の気性か、62年館もなく、55年館も取り壊して。

社会人になって、打ち合わせが終わって雑談になったとき、
出身校の話が出た。「法政です」と言うと、「ぼくもです」と、若い担当者。
「多摩キャンパスでした」。あ、行ったことがない。
違う大学の取材でそちら方面に行ったことはある。その大学もかつては男くさい
大学というイメージだったが、キャンパスは女子占有度が高く、男子も
それなりにおしゃれだった。いまは、そんな感じなのだろうとモーソウする。

ついでに書くと、「専攻は何ですか」と聞かれて「哲学です」と答えると、
複雑な反応をされたりした。挙句の果てに笑われたりしたこともある。
「そこしか受からなくて」と言い訳をして。事実だけど。

夫婦ゲンカをして理詰めに物言いをすると、
「哲学なんてベンキョーするから屁理屈っぽくて、ロクなもんじゃねえ」
と言われたりもするが、それは専攻科目より生まれついての資質の方が
大きいと思う。

ムーミン』に出て来るジャコウネズミさんは、
「ムダじゃ、ムダじゃ」が口癖だけと、ストア学派なのかねえ。

昔、スタジアムジャンパーに、法政カラーのオレンジの「H」のエンブレムを
つけて会社に行ったら、出入りしていたスタイリストのおねえさんに「エルメス?」
と聞かれた。めんどくさいんで、「パチもんです」と答えた。

六大学野球は、最近、優勝から遠ざかってしまった。箱根駅伝は、酔いながら応援している。
でも予餞会で負けた。

いつだったか、仕事関係で企画書をでっちあげなければならなくなって、本の探し物をしていたら、卒業論文を閉じたファイルが出てきた。
表紙は焼けているが、中身は読める。
太字の万年筆で、ブルーブラックのインク。手書きで書かれた原稿。
ところどころ矢内原伊作先生の赤鉛筆で赤が入っている。誤字・脱字から
はじまって意味不明なひとりよがりの言い回しには「?」が。
若さとバカさ、怖いもの知らずの恥ずかしい未熟な論考。

プラグマチックな側面は大切だけど、即戦力に主眼を置いた専門学校みたいな大学に
なっちゃ困るよなあ。
学んだことは、知や肉となっていまに至る。
スロースローラーニング。それでいいと思う。

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