村上春樹の前は、サリンジャーだった

サリンジャー ――生涯91年の真実

サリンジャー ――生涯91年の真実

 

サリンジャー ――生涯91年の真実』ケネス・スラウェンスキー著を読む。
いやあ分厚くて重くて移動中読むのが結構つらかった。
中身は、全然つらいことなくて、
ほんとによく調べて書いてある。
サリンジャーは、十代最後の頃に滑り込みで読みだして、麻疹みたいにはまった。
とりわけ『ライ麦畑でつかまえて野崎孝訳に。
ナイン・ストーリーズ』などの作品は角川文庫版の鈴木武樹訳で読んだ。
大学の英語の課題で原典を読んで感想をまとめるっていうのがあって、
無謀にも『ライ麦畑でつかまえて』のペーパーバックを古本だったかな。
だとしたら、東京泰文社あたりか。読んでみたが、乏しい英語力では
玉砕状態だった。担当の講師もサリンジャーの文章は難しいと言っていた。
村上春樹の前は、サリンジャーだった。オーバートークじゃないですぜ。

サリンジャーは、ぼくが読んだ時から隠遁生活を送っていた。
この本を読むと、若い女性好き。ロリータコンプレックスまではいかないようだ。
作者の文学の底辺に漂っている死生観とかは、
軍人として第二次世界大戦での欧州で生まれたそうだ。
ヘミングウェイとの交流も意外だった。
『ニューヨーカー』など雑誌の編集者との屈折した交流は、肯けた。
意外なことに、無名の頃は、作品はボツをくらっていた。
作品は発表してもらいたい、原稿料という経済的面からも。
でも、出すからには安っぽく売らないでほしい。装幀にまで細かい注文をつける。
このせめぎ合い。

隠遁生活といっても、筆を折ったわけではないようで、
執筆は続けていたとか。
でも、新作の発表はついぞなかった。
作家は作品を読めばいい。ごもっとも。
でも自伝や評伝を読むことで、さらに文学への理解が深まる。

途中まで読んでそれっきりになった
柴田元幸訳の『ナイン・ストーリーズ』が、どっかに埋もれている。
続きを読んでみよう。

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